■ CDS&RECORDS [4/11]
GRAPHITE
「GRAPHITE/Chestnut Loke」(1996年 UK)
1960年代末期に結成され、シングル2枚をリリースし、PINK FLOYD、ROXY MUSIC、Arthur Brown's Kingdom Come、T.REXなどの前座を務めた経験もある5人組の未発表音源集。 1970年から74年の未発表曲を集約した16曲が収められています。 音の方はサイケ風味のブルース、フォークロックで、単調なリズム、アピールの少ないメロディ等、とらえどころのないサウンド。 シングルB面で、このアルバムのタイトルトラックにもなっている「Chestnut Loke」と「Freedom」に、Mellotron 3Violinsが使用されています。 ものすご〜い薄味のPINK FLOYDか、3キロ先で演奏するMOODY BLUESか、ダルで霧に霞んだムードはカテゴライズするのが難しい。 Chris Goreの演奏するMellotronは、「Chestnut Loke」(1972年)ではMellotron MARK II、「Freedom」(1974年)ではMellotron M400Sでのレコーディングに聴こえます。
2008年3月8日
豪州産コンテンポラリーロック
「THE MARSHALL BROTHERS BAND/The Marshall Brothers Band」(1975年 AUSTRALIA)
Mellotronを多用したヘヴィシンフォニックアルバムをリリースしている作曲家、Chris Nealをプロデューサーに迎えた彼ら唯一の作品。 アメリカ西海岸のAORテイストさえも感じる楽曲は、オルガンやエレクトリックピアノがセンス良く配されていて、しかめっ面で聴くようなプログレアルバムではありません。 8曲中6曲に使用されるMellotronはエフェクトを掛けられる事が多く、飛び道具的な音(今となっては古臭い!)で多用されるシンセと同様、新規性を求めているようです。 「Pioneer Suit」「Summer Love」で聴かれるMellotron 3Violins、Fluteは、潮風を感じさせるライト&メロウな曲に乗せて、Mellotronソングとしては異色な爽快さを持っています。 また、ポップスにおいてElectric Sitarを使用するのと同様、この「Summer Love」では生のSitarを非サイケ楽器として使用しているのも興味深いです。 しかし、全体を見渡せば埃っぽい骨太なロックや、ディスコ風な曲も混在していて、75年という微妙な時代を感じさせます。 Mellotronをはじめとするキーボードは、Robert Scottが担当。
2008年3月8日
プログレ終末期の精鋭
「ST. ELMO'S FIRE/Splitting Ions In The Ether」(1980年 USA)
1979年オハイオで結成された、ブリティッシュ志向のアメリカンプログレッシヴバンド。 1980年のライヴアルバム(10インチアナログ)「Live At The Cleveland Agora」に収録された4曲に、同日の別テイク3曲と更に別の2曲を加え1998年にCD化されたもの。 KING CRIMSONの暗黒さをベースに、GENESISの華を加えたようなサウンドで、KING CRIMSON「Fracture」やGENESIS「Chinema Show」などを、明らかにわかるモチーフとしてアルバムに何度も登場させています。 キーボードのSteve Stavnickyは、全9曲中6曲に可能な限りのMellotronを詰め込んで、アメリカンバンドらしからぬ強い陰影を音に表現しています。 ヨレて蛇行する壮絶なMellotron 3Violinsの多用と、Moog Taurusベースペダルの重低音の組み合わせは、このバンドの看板でしょう。 演奏技術も高く、兼任する楽器もあり、音は厚く変化に富んでいます。 また、曲調によってBill BrufordとPhil Collinsを行き来する、ドラムスタイルの変化も聴きどころ。 同時期の本家KING CRIMSONとGENESISの劇的な変化を見れば明らかなように、周回遅れのプログレフォロワーは、その再評価を20年間待たねばなりませんでした。
2008年3月8日
RAINBOW THEATRE
「RAINBOW THEATRE/Fantasy Of Horses」(1976年 AUSTRALIA)
作曲、ギター、キーボードのJulian Browing率いる、管弦楽セクションを含む14人編成バンドの2作目。 オペラ調のヴォーカルを擁するクラシカルロックはENIDとの、又そこに加わるあか抜けないブラスセクションは、EKSEPTIONを彷佛とさせます。 アルバムオープニングの「Rebecca」から、Tony Banksを思わせるMellotron 3Violinsの氷壁がそびえ立ち、ただならぬ緊張感を持って幕を開けます。 1曲を除く全曲にMellotron 3Violinsが導入されていて、散漫な印象の演奏をグッと引き締めています。 タイトルトラック「Fantasy Horses」中盤での、フェイザーで揺らめくMellotronや、トランペットソロに重なる硬質なMellotronは、このアルバムのハイライトでしょう。 そしてエンディングまで丁寧にMellotron 3Violinsで締めくくられています。 生のストリングスセクションを擁しながらも、わざわざMellotronを使ったのは、やはりMellotronの個性を認めていた証なのでしょうか。 M400Sを使用したと思われるサウンドは、凝ったフレーズなど無いのですが、その直球勝負がジワジワと効いてきます。
2008年3月7日
LUKE
「Steve Lukather/LUKE」(1997年 USA)
TOTOの看板ギタリスト、Steve Lukatherのソロアルバム。 少し翳りのあるメロディアスなギターアルバムで、Steve自らMellotronを弾いています。 アルバムオープニングの「The Real Truth」では、Mellotron StringsとFlute、7曲目「Don't Hang Me On」でもMellotron Stringsが使用されています。 しかしどちらも曲中にMellotronの断片が顔を出すだけで、目立つ出番はナシ。(でも音ですぐにわかる!) 楽器のクレジットには堂々と書かれていますので、よっぽどMellotronのサウンドが気に入ったのでしょうね。
2008年3月6日
ADD N TO (X)
Steve ClaydonとBarry 7の男性2人と、女性Ann Shentonの3人組エレクトロノイズユニット。 ヴィンテージ電子楽器からの懐かしくも未来的な電子音と、THE HIGH LLAMAS、STEREOLABからゲストドラマーを迎えたサウンドが、妙に肉感的なコントラストを出しています。 SILVER APPLESからKRAFTWERKを経由し、独自の培養を重ねたサウンドは、音の「断片」から「音楽」へ形成される直前ギリギリの生々しさを保って刺激的です。
「ADD N TO (X)/Avan Hard」(1999年 UK/画像左)
1999年発表の2ndフルアルバム。 アルバム1曲目「Barry 7's Contraption」では、シンセの穏やかなリズムをベースに、オシレーターノイズ、ヴォコーダー、テルミン、中盤から顔を出すMellotron 3Violinsのシリアスな空気が面白い。 4曲目「Steve's Going To teach himself Who's Boss」では、ホラー映画のサントラを思わすシンセノイズに、Mellotron Celloが重なります。 アルバム後半7曲目からラストの11曲目までは、Mellotron 3Violins、Cello、Choir、Fluteの大暴走、猛吹雪、弾きっぱなし。 リングモジュレーションの掛かったシンセに対抗してみたり、テルミンと競演してみたり、ヨレヨレのCelloがうめき声を上げたり、Choirがリズムを刻む上を3Violinsがメロディを奏でたり。 Mellotronで満腹になりたい方、プログレやポップスのMellotron定番フレーズに飽きてしまった方、このアルバムを聴くべきでしょう。
「ADD N TO (X)/Add Insult To Injury」(2000年 UK/画像右)
続く2000年のアルバムは、ライヴ感を強調し、更に力強い印象です。 「Kingdom Of Shades」では、Mellotron ChoirとCelloがリズムをとり、シンセが爆発する中Mellotron Fluteまでも顔を出す豪華版。 Mellotronがあまりに強引な使われ方なので、ちょっと笑ってしまいそうなくらい。 「Hit For Cheese」では、冒頭からMellotron Celloの低音部(コントラバス録音の部分)がブリブリ鳴り続け、その上をシンセやらボコーダーがビュンビュン飛び回ります。 珍しく真っ当なロックナンバー「MDMH(Miami Dust Mite Harvest)」では、Mellotron Choirが天から降り注ぎます。 「Incinerator No.1」では、ディストーションとコンプレッサーで変型したMellotron Clarinet(Flute? Choir??)が曲をリードします。 アルバムラスト「The Regend Is Dead」では、マーチ風のドラムに導かれ、Mellotron Cello、Choir、Flute、3Violins、Clarinetがひたすら鳴り続けるという、仰天のMellotronアンセム。 使用楽器は、Mellotron、Synthi AKS、Moog Micro Moog、Moog Rouge、Electro Harmonix、ARP2600、KORG Micro Preset、KORG MS20、YAMAHA SY2、Roland Promars、SUZUKI Ominichord、SUZUKI Q Chord、Hammond C3、Clavinet、Celeste、Sequential Pro One、他多数。 メンバー3人共Mellotronを演奏しています。
2008年3月6日
プレ・グリーンスレイド
「WEB/i spider」(1970年 UK)
管楽器を積極的に取り入れたジャズロックバンド、WEBの3rdアルバム。 後にGREENSLADEへ参加するDave Lawsonが加入し、いきなり全作曲を担当し独特の苦いヴォーカルも披露しています。 そして攻撃的なオルガンやMellotronサウンドで、プログレッシヴロックへ接近しています。 薄暗く無気味な音像は、同年のKING CRIMSON「Lizard」にも通じる所があります。 Mellotron MARK IIでしょうか、「I Spider」「Love You」「Ymphasomniac」では、それぞれR側から濃厚なMellotron Stringsが聴こえてきます。
「FIELDS/Fields」(1971年 UK)
元RARE BIRDでキーボードのGraham Field、元KING CRIMSONでその後はGREENSLADEへ加入するドラマーAndrew McCulloch、そしてヴォーカル、ギター、ベースにメロトロンも弾くAlan Barryのトリオ唯一の作品。 オルガン主導の曲はEL&P、ギター主導の曲はPeter Banks在籍時のYESのような印象で、バロックやクラシックをベースにした叙情もあれば、ブルージーなロックも聞かせるというバラエティに富んだ内容になっています。 Andrew McCullochのダブルバスドラムと華麗なスネア捌きはやはり秀逸で、このバンドのテンションを一気に高めています。 アルバムラスト「The Eagle」ではハードなイントロに続き、パッヘルベルのカノンを思わせるMellotron 3Violinsの静寂部を経て複雑に曲が展開して行きます。 三人のアイデア溢れるブリティッシュロック名盤。
2008年3月6日
おいらは町の宇宙飛行士
「BONZO DOG BAND/Urban Spaceman」(1968年 UK)
2ndアルバム「The Doughnut in Granny's Greenhouse」に、Paul McCartneyプロデュースのヒットシングル「Urban Spaceman」を加え改題したアメリカ仕様。 Paulだって浮かれる宇宙時代を背景に、サイケデリックとトラッドが混在するコミカルなポップ作品満載です。 目まぐるしいサウンドコラージュをちりばめた作品中、「Humanoid Boogie」に唯一Mellotronの音を確認する事が出来ます。 間奏のファズギターの後を追って、Neil Innesの演奏するMellotron MARK IIの3Violinsが何度も登場します。 逆回転風にも聴こえる独特のMellotronサウンドは、曲にも、そして1968年という時代にもぴったりマッチ。 この甘くとろけるようなストリングスサウンドは、何ものにも代え難い魅力があります。
2008年3月5日
黒幕はMitchell Froom
「Daniel Powter/Daniel Powter」(2005年 CANADA)
シンガーソングライターDaniel Powterのデビュー作は、全曲に怪しくも爽快なキーボードサウンドを盛り込んだ、プロデューサーMitchell Froomのお家芸満載のポップアルバムです。 Wurlitzerの優しいエレピで幕をあける1曲目「song 6」、続く2曲目「free loop」では、カラリと乾いたChamberlin 3Violinsが使用され、大ヒットシングルとなった3曲目「bad day」では、Orchestronの無機的なChoirが登場し、引き続きChamberlin 3Violinsがセンチメンタルな曲を、明るく軽快に仕上げています。 4、5曲目「suspect」「lie to me」では、トレモロのかかった謎のストリングスが鳴っています。 Orchestronを使ったと、キーボードマガジン誌上でDanielが答えている6曲目(と9、10曲目)「jimmy gets high」を聴けば、これは上記の謎のトレモロストリングスと同じ音がします。 と言う事は、ChamberlinでもMellotronでも無いこれら3曲は、Orchestron Stringsという事になりそうです。 7曲目「styrofoam」ではChamberlin 3Violinsが、続く8曲目「hollywood」でもChamberlin 3Violinsに加えて、Orchestron Choirが鳴っていて、ディスク音源のノイズまでループして聞こえる生々しさが、マニアの心をくすぐります。 Orchestron使用の9、10曲目ですが、9曲目「lost on the stoop」でのメインはChamberlin Celloと思われるので、Orchestronは遠くで聴こえる高音のChoirの事でしょうか。 10曲目「give me life」はと言えば、ピッチベンドで3回ほど登場する音がOrchestron Stringsかも知れません。 ボーナストラック「stupid like this」では、このアルバムの基本サウンドとも言えるChamberlin 3Violinsが、生ストリングスかと思わせる素晴らしい演奏で登場し、アルバムの最後を飾っています。 キーボードマガジンではChamberlinの記述は無く、Mellotronの使用が解説されていましたが、私の耳にはMellotronらしき音は聴こえて来ませんでした。 2ndアルバムでは、使用楽器詳細を是非ともブックレットに掲載して頂きたいものです。
2007年11月15日
INTERFACE
「INTERFACE/interface III」(2000年 JAPAN)
ギタリストの野田真弘を中心とした、1986年結成のクリムゾンコンプレックスバンド。 70、80、90年代のおおよそ全てのKING CRIMSONを総括するような曲作りで、ニューウェーブ調の日本語歌詞が出ると美狂乱やマンドレイクにも似てきます。 スティック奏者を含むベーシスト二人のバンド構成や、Robert Fripp得意のロングトーンから、ギターシンセ、ポリリズムを網羅して、モロなフレーズがあちこちに散見できます。 「WARAE」「JARAN」「hide and seek(DUE)」で、野田真弘の弾く本物のMellotron 3Violinsが鳴り響くのですが、この絶妙にヨレたサウンドが素晴らしい。 Discipline以降のKING CRIMSONへ、積極的にMellotronを導入するとこんな音になるという、クリムゾンファンの空想を具現化しています。
(画像右/ブックレットの画像で野田氏が前にしたMellotronは、ビジュアルアーツ専門学校・大阪のスタジオ機材か?)
2007年11月13日
100s
「100s/OZ」(2005年 JAPAN)
中村一義を中心に、別のプロジェクトでも活躍する実力派メンバーを加えた6人組。 「ファーストにして、すでにベスト!」と帯にも謳われているように、全21曲70分を超える内容は、自在なメロディとバンドパワーが漲る作品になっています。 ビートルズコンプレックスがストレートに表現された「Satnta's Helper」と、続く「Honeycom.ware」では苺畑なMellotron Fluteが、「扉の向こうに」ではMellotron Stringsが池田貴史の演奏で導入されています。 「Honeycom.ware」の冒頭部分など、Mellotronの特徴があからさまになるのですが、恐らくサンプル音源だと思われます。
2007年11月13日
プログレファンのMOR
「PORCUPINE TREE/Deadwing」(2005年 UK)
80年代末期からの活動を経て本邦初リリースとなった本作は、ロックの様々な要素をセンス良く凝縮した良作。 Steven Wilsonが牽引するハード、サイケ、プログレッシヴな土台に、甘いメロディと美しいコーラスを上乗せし、元JAPANのRichard Barbieriが耽美なキーボードで仕上げる段取り。 そこへ、Stewart & GaskinやJakkoとの活動で知られるGavin Harrisonが、精緻なドラムで疾走し、陰影と湿度を程よく調整。 5曲目その名も「Mellotron Scratch」をはじめ、アルバム全面で登場するMellotronサウンドは、サンプルの為軽く後味スッキリ。 Mellotronを本物に入れ替えるだけで、一気に重厚感を出せると思うのだが、これも彼らのバランス感覚か。
2007年11月12日
同じメロトロン
「Rick Wakeman/RETRO」(2006年 UK/画像左)
自ら所有するすべての鍵盤楽器の音を、一つの作品にまとめたら面白いかもしれない。 発想の原点は、Rick Wakemanがマン島に居を構えていた頃に浮かび、その後イギリス本土への引っ越しを機に実行に移されました。 HAMMOND M102、Polymoog、Prophet 5、RMI Electra Piano、Mini moog、KORG Vocoder等々を並べ、既にMellotronを処分してしまっているRickは、バンドのベーシストLee Pomeroyから状態の良いMellotron M400Sを借りて、レコーディングに臨んでいます。 全10曲中8曲にMellotron 3Violins、Choir、Flute、Brassを派手に使用しながらも、それぞれの楽器に上手くスポットライトが当たるよう、アレンジが工夫されています。 音の出る豪華なヴィンテージキーボードカタログは、YESのフレーズをこっそり忍ばせてあったりして、なかなか楽しめます。
「ENGLAND/Live in Japan KIKIMIMI(聴耳)」(2006年 UK/画像右)
2006年7月川崎クラブチッタにおける、ENGLAND奇跡の来日公演を収めたライヴ盤。 お世辞にも上手いとは言い難かったものの、30年の時を超えて再現されるステージを前にして感涙せざるを得ない、素晴らしいものでした。 溯って2005年11月、私のもとにENGLANDのマネージメントから1通のメールが来ました。 来日公演で、サンプラーではなく本物のMellotronを使いたいので、楽器を準備して欲しいとの要請だったのです。 その後、2台の状態の良いMellotronをライヴ用に準備したものの、様々な事情で残念ながら実現には至りませんでした。 しかし、ライヴ当日ステージの幕が上がった瞬間の私の第一声は「メロトロンあるじゃん!」だったのです。 ステージには白いMellotron M400Sや、HAMMOND、Rhodes、Clavinet、Mini moogなどが要塞のごとくセッティングされていました。 でも、ただの一度も鍵盤に触れられる事の無かったMellotronは、その上のKORG TRITONによるサンプル音が身替わりとなっていたのです。(Mellotronには電源コードすら接続されていなかった!) 結果、このライヴアルバムはRick Wakemanのアルバムでも活躍するベースプレイヤー、Lee Pomeroyの所有する本物のMellotron M400Sを使い、後日オーバーダビングされたものです。 「Poisoned Youth」の7分08秒〜28秒、8分40秒〜50秒にかけての、ウインドチャイムやティンパニーロールなどは、キーボードRobert Webbの所有するHalf Cut TRON(Mellotron MARK II #109)ステーション#5の音だったりもします。 ちなみに、Robert Webbがギターを弾き語る「Yellow」のバックで、Mellotronサンプルを演奏するのは、コーラスのMaggie Alexanderです。 ストリングスやブラスをはじめ、混在するサンプラーと本物のMellotronの音の違いに「聴耳」を立ててみるのも、一つの楽しみ方かと思います。
2007年10月16日
アビーロードのMellotron MARK II
「THE JANET/Green Speedway」(1974年 JAPAN/画像左)
後にオフコースへ加入する、松尾ジュン(松尾一彦)と大間ジローが在籍した、GSの残り香たっぷりなザ・ジャネット。 日本テレビ「キンキン&ムッシュのザ・チャレンジ」で初代チャンピオンになり、その特典としてロンドンのアビーロードスタジオで録音された1stアルバム。 アレンジとキーボードに東海林修を迎え、THE BEATLESも使用したであろうMellotron MARK IIを導入しています。 「白い部屋」「グリーン・スピードウェイ」では、一聴してMARK IIと判る素晴らしいMellotron Stringsが冴え、日本国内で一般的なMellotron M400Sとの違いが明らかです。 デビューシングルとなった「美しい季節」でも、イントロからエンディングまで情感たっぷりなMellotron Stringsが鳴り響きますが、シングルバージョンに比べMellotronのミックスがやや控えめです。 アルバムラスト「風・・・」は、Mellotron Fluteの重奏が終始全面に、サビにMellotron Celloが鳴る幻想的な小曲。 この曲は国内でレコーディングされていますので、M400Sを使ったものと思われます。 また、オルガンのクレジットが無い事を考慮すると、アルバムトップ「スウィーター」のバッキングもMellotron Stringsかもしれません。
「THE JANET/あなたへ・・・」(1975年 JAPAN/画像右)
井上忠夫(井上大輔)が作編曲したシングル「あなたへ・・・」では、全編にMellotron Fluteの重奏と、サビにMellotron Celloを加えています。 KING CRIMSONもお好きであっただろう井上さんは、実際にMellotronを弾いてどんな感想をお持ちだったでしょうか。
2007年10月14日
コスモス・ファクトリー
「COSMOS FACTORY/トランシルヴァニアの古城」(1973年 JAPAN)
1970年に名古屋で結成された、和製本格プログレッシヴバンドの1stアルバム。 キーボードの泉つとむは、いち早くMellotronやmoogを導入しています。 PINK FLOYDのブルージーさをベースに、日本的叙情を加味しながらも、硬質にまとめあげた印象です。 1曲目のインストルメンタル「サウンドトラック1984」から、ハードでメカニカルなシンセサイザーと共に、ヒステリックなMellotron 3Violinsがテンションを上げています。 続く「神話」でもMellotron 3Violinsは鳴り続け、GS的もしくは演歌的ともとれるウェットなボーカルとの組み合わせに、思わず胸が熱くなります。 18分を超えるアルバムB面の組曲「トランシルヴァニアの古城」でも、終始Mellotron 3Violinsが鳴り続けます。 楽曲、演奏、共に高次元でまとめられた、ジャパニーズプログレッシヴロックの傑作。 スケール感は増したものの、散漫な印象の次作「謎のコスモス号」では、殆どMellotronは使われていません。
2007年10月13日
渚にて
「渚にて/こんな感じ」(2001年 JAPAN)
海外での評価も高い、柴山伸二、竹田雅子の夫婦サイケフォークロックユニットの4thアルバム。 1曲目「新世界」では、点描のように置かれる歌詞の上を、(私の耳が正しければ)Mellotron CelloとChamberlin 3Violinsという珍しい組み合わせが、竹田の演奏で流れます。 途中に顔を出すVibraphoneも、恐らくMellotronの音源と思われます。 フォーキーなのにギターが激しく歪んでいる「川をわたる歌のうた」では、Mellotron 3Violinsを柴山が演奏しています。 クレジットにはMellotron、Chamberlinとありますが・・・もしかしてサンプルでは? 薄らいだ記憶を辿るようなソフトフォーカスな音像はは実に美しい。
2007年10月13日
ニューミュージックいろいろ
「ふきのとう/ふきのとう」(1973年 JAPAN/画像左)
北海道出身のフォークデュオ、デビューシングル「白い冬」を含む1stアルバム。 編曲、演奏には当時さまざまな作品でMellotronを多用していた、石川鷹彦、瀬尾一三らが名を連ねています。 細坪基佳のハイトーンボイスが一際美しい「ひとりぼっちで」では、繊細なMellotron 3Violins、「夏の人」では、Mellotron CelloをベースラインにエンディングまでMellotron 3Violinsがお見送り。 Mellotronのクレジットは、石川鷹彦。
「三輪車/午後のファンタジア」(1974年 JAPAN/画像中)
デビューシングル「水色の街」を含む10曲を、「プロローグ」(インストルメンタル)「エピローグ」で挟んだ、全12曲の1stアルバム。 その「プロローグ」「エピローグ」では、ギターでリードボーカルの山崎稔がピアノに織りまぜ、Mellotronの3violins、Flute、Celloを使った小曲を披露しています。
「飛行船/風の時刻表」(1977年 JAPAN/画像右)
1stアルバムにして、リードボーカルでギターの安倍光俊(あんべ光俊)のソロ移行期にあたるのでしょうか、収録されるシングル初期作品以外は、先輩格のオフコースがメインでバックバンドを務めています。 「花嫁泥棒」「遠野物語」では、プロデューサーの武藤敏史がMellotron 3Violins、Fluteと特徴的なMellotron Celloの低音部を、「五月になれば」では、小田和正が生フルート並の饒舌さでMellotron Fluteを演奏しています。
2007年10月12日
GSから本格ロックへ
「ローズマリー/あいつに気をつけろ!」(1973年 JAPAN/画像左)
失神バンドで有名な元オックスの福井利夫と岡田志郎、元ロックパイロットの中尾善紀らが結成した、70年代ネオGSバンドの1stアルバム。 これがメジャーデビューとなる東冬木(モト冬樹)が、ファズ、ワウワウなどを駆使した熱いリードギターを聞かせます。 山上路夫のユニークな歌詞が光る「マック・ラ・ヤミ」では、Mellotron 3ViolinsとCelloが結構な速弾きを含む演奏で登場します。 「哀愁の協奏曲」では、間奏にMellotron Fluteが使用されています。 キーボードの上原おさむには、ハモンドオルガン、メロトロンのクレジットがあります。 また、デビューシングルとしてカットされた「あいつに気をつけろ!」のジャケットには、東冬木のクレジットでメロトロンとありますが、生のストリングスしか使っていないように聞こえます。(LPのクレジットはリードギターのみ)
「ハリマオ/猛虎」(1974年 JAPAN/画像右)
オックスに在籍した岩田裕次(後にマネージャー、プロデューサー)、元ブラインドバードの藤沢実、堀内勉らが中心となり結成された、ツインボーカル6人編成ハードロックバンドの1stアルバム。 URIAH HEEPタイプのバンドとしてカテゴライズされている通り、ファルセットを多用する厚いコーラスワーク、速いシャッフルのリズムなど、それらしい要素があふれていますが、ハモンドオルガンは思ったより控えめです。 1曲目「彷徨」では、キーボードの安田篤広がボリュームペダルを多用したMellotron 3Violins、Celloのユニークな演奏を披露しています。
2007年10月12日
厚見玲衣 関連
「NOIZ/NOIZ」(1983年 JAPAN/画像左)
元カルメン・マキ&OZの春日博文、川上シゲ(川上茂幸)らと、ヴォーカリストひとみげんき(人見元基)が結成したストレートなロックバンド。 1981年頃から活動を共にし、この1stアルバムのリリースのみで解散。 後に人見とVOW WOWへ加入するゲストキーボードの厚見れい(厚見玲衣)は、A面ラスト「EVEの夜」で鬼気迫るMellotronプレイを聞かせています。 イントロからエレキギターが唸りを上げたのかと思えば、それは強烈にディストーション(+ディレイ)の掛かったMellotron Flute! バックには深くリバーブの掛けられたMellotron 3Violins(Celloミックス?)と、硬質なアコースティックギターのストローク・・・これはまぎれもない「宮殿」テイスト。 中間部では、ノンディストーションのMellotron Fluteで幽玄に流したかと思えば、再びMellotron 3ViolinsをバックにディストーションMellotron Fluteの雄叫び。 続いてMellotron 3Violinsをバックに曲が進み、Mini moog並に弾きまくるディストーションMellotron Fluteの速弾きを挟み、Mellotronの轟音に包まれながらエンディング。 ここまで激しいMellotronのソロプレイは、他にあまり例が無いでしょう。 Mellotronの表現領域が一気に拡大されています。
「柴田直人/STAND PROUD! II」(1999年 JAPAN/画像右)
ANTHEM、LOUDNESSのベーシスト柴田直人が、自らのルーツであるブリティッシュロックの名曲をカバーした第二弾。 二井原実、厚見玲衣、人見元基、三柴理、小暮武彦、北島健二らをはじめとする、錚々たるゲストプレイヤーが総動員してバックを固めています。 四人囃子の佐藤満がボーカルをとる、KING CRIMSON「Starless」のカバーでは、厚見玲衣がオリジナルと寸分違わぬ息づかいでMellotronを演奏しています。 1フレーズだけMellotron Celloに切り替わるセカンドパートも当然の様に再現し、収録時間までオリジナルと全く同じ、12分18秒!
2007年10月10日
杉本真人
「杉本真人/あすふぁると」(1975年 JAPAN)
後に小柳ルミ子の「お久しぶりね」「今さらジロー」など、ヒット歌謡も多く手掛ける事になるシンガーソングライター、杉本真人の1stアルバム。 デビューシングル「M氏への便り」のB面でもあった、アルバムオープニング「マニラの夕陽」ではMellotron 3Violins、「てるてるぼうず」ではMellotron Flute、「姉さん」ではMellotron 3Violinsが、それぞれ印象的なフレーズで使用されています。 バックを固めるのは、クロスオーバー、フュージョンの全盛期を盛り上げた上田力グループで、編曲も担当する上田力が、全てのキーボードを担当しています。 全体的にカッチリ決まった演奏の中で、ゆらゆら揺らめくMellotronは異彩を放っています。
2007年10月9日
ケメ
「佐藤公彦/片便り(落葉に綴る)」(1974年 JAPAN)
ケメこと、佐藤公彦の7thアルバム。 アメリカからの帰国第一作目になるという本作の1曲目「西海岸へ続く道」では、旅先の思い出を織りまぜ、カリフォルニア、アリゾナ、ハイウェイ、サンセットブルーバードなどのカタカナ言葉をちりばめています。 アレンジャー矢野誠の手になるのでしょうか、間奏から以降はフェイザーでゆらぐエレピと共にMellotron 3Violinsが登場します。 終盤、高音がオーバーになり音が割れるところなど生々しく、リアルメロトロンの力強さを感じます。 レコーディングはエレック第2スタジオとなっているので、一般的なMellotron M400Sを使用したと思われますが、その音の広がりは「宮殿」級の名録音だと思います。
2007年10月8日
銀河鉄道
「銀河鉄道/銀河鉄道」(1975年 JAPAN)
CSN&Yに憧れた、はっぴいえんどフォロワー。 柳田ヒロをプロデューサー、後藤次利、坂本龍一らをバックミュージシャンに従えたデビューアルバム。 アルバムオープニングの「唄をひとつ」と、ラストの「もとどうり」に、中島政雄の演奏するMellotron Choirが登場します。 重厚で程よくヨレたMellotron Choirが、空虚な都会感を演出しているように聞こえます。 ストリングス系には軽快なサウンドのSolinaが使われ、Mellotronとは対照的です。
2007年10月8日
加藤登紀子と長谷川きよし
「加藤登紀子/この世に生まれてきたら」(1974年 JAPAN/画像左)
ライヴ盤を含めて、既に12枚目を数える1974年のスタジオアルバム。 編曲を深町純が担当するタイトルトラックでは、中間部分からMellotron Choirを加え、清々しく荘厳なムードを演出しています。 一瞬Mellotronかと思うストリングスは生演奏です。 シングルカットされた「黒の舟唄」(両A面のカップリング「灰色の瞳」は長谷川きよしとのデュエット)でのフルートも、Mellotron風で悩ましいかぎりです。
「長谷川きよし/街角」(1975年 JAPAN/画像右)
作家陣に永六輔、荒井由実、中山千夏、バンドメンバーには、細野晴臣、鈴木茂、つのだひろ、玉木宏樹ほか、多彩なアーティストを迎えて制作された8thアルバム。 後にフュージョンバンド、カリオカなどで活躍するキーボーディスト乾裕樹が編曲した「どうしてあの日」では、乾自身にHAMMONDとMellotronのクレジットがあります。 Mellotronかと思わせる中谷望のエレクトリックフルートと、つのだひろのドラムのキレの良さにブッたまげながら聴き進むと、どれがMellotronなのかわからない。 レコーディングしたもののMellotronではダメだったのか、19人編成!の生ストリングスが大音量で加えられています。 HAMMONDは結構聴こえるのに...これはMellotronに対する弦楽ユニオンの逆襲か?
2007年10月8日
ちわきまゆみ
「ちわきまゆみ/Jewels」(1985年 JAPAN/画像左)
デビューシングル「GOOD MORNING I LOVE YOU」を収録した1stミニアルバム。 バラエティに富んだ作品を、PINKのベーシスト岡野ハジメが、ポップでグラマラスにプロデュースしています。 くらもちふさこ(!)が作詞する「A-GIRL」では、生のブラスと共にMellotron 3Violinsが登場。 T.REX並のいかがわしさで、アルバム1曲目からMellotron全開とは、恐れ入った、こりゃ凄い! SALON MUSICの2人が作詞作曲するサイケナンバー「MARBLE EYES」では、イントロから怪しいMellotron Fluteが鳴り、3Violinsが苺畑よろしくリズムを刻んだと思えば、その後はバックで大音量。 本物のMellotronでなければ出せないその世界は、高音が歪んだりして生々しい。 Mellotronのクレジットは岡野ハジメで、サンクスクレジットには、当時NOVATRONを輸入していたLEO MUSICも名を連ねています。
「ちわきまゆみ/ANGEL・・・We Are Beautiful」(1986年 JAPAN/画像中)
「60'sから90'sまでひとっ飛び」というキャッチコピーに偽り無し、サイケ、グラム、ファンク、テクノごちゃまぜのレトロフューチャーな2ndアルバム。 そのサウンドの核となるMellotronを多用するのは、プロデューサー岡野ハジメ。 「LITTLE SUSIE」では、お得意T.REX風ブギーに怪しいMellotron 3Violins、70年代リズムボックスとSTYLOPHONE独特のチープな電子音が素敵な「BIRDY DAY」でも、Mellotron 3Violinsが主役級。 「よごれたいのに」では、派手なファズギターのバックをサイケなMellotron Fluteが追随。 A面ラスト「ANGEL BLUE」では、間奏にMellotron 3Violinsのソロが登場し、もう一方の要であるコンボオルガンとの競争状態。 しかもこれがMellotronの生々しさ丸出しでたまらない! B面でもその勢いは衰えず、T.REX風ナンバー「ANGEL FATE」には生ブラスとMellotron 3Violinsの激走。 続く「アドルフは王様」でもMellotron 3Violins、タブラも使用されるサイケな「LOTTA LOVE」ではまたもやMellotron 3Violinsのソロまで登場し、エンディングまでボーカルに併走。 一連のアルバムの中で、Mellotronの質量はこの作品がピークでしょう。 KEY INSTRUMENTSと記載されるクレジットには、神山暁雄(ホッピー神山)、BANANA(川島バナナ)、岡野ハジメのクレジットがあります。
「ちわきまゆみ/ATTACK TREATMENT」(1987年 JAPAN/画像右)
前作同様3人のキーボーディストが名を連ねる3rdアルバムで、Mellotronはプロデューサー岡野ハジメのクレジット。 作風に大きな変化は無いものの、前作に比べデジタル度が上がり、Mellotronは出番が少ないだけでなくミックス音量まで控えめ。 「妖精の海」「あなたなくなる」「ANGEL DUST」の3曲で、Mellotron 3Violins、Fluteが使用されています。
2007年10月8日
Demis Roussos
「Demis Roussos/Forever and Ever」(1973年 GREECE/画像左)
言うまでもなく、元APHRODITE'S CHILDのボーカリストDemis Roussosのソロ作品。 当時は、メインライターでキーボーディストのStylianos Vlavianosをリーダーとする、自らのバンドと行動を共にしていました。 1973年の大ヒットシングル「Foever and Ever」、Francis Lai作曲の同名映画主題歌「Lovely Sunny Days」、APHRODITE'S CHILDのデビューヒット作「Rain and Tears」を想起させる「Lost in a Dream」に、地中海の風が吹き抜けるような「Velvet Mornings」と、Mellotron Stringsを導入した楽曲が並びます。 特に「Lost in a Dream」でのDemisの絶唱と甘く美しいMellotronの重奏、「Velvet Mornings」エンディングでの女声コーラスとMellotronによる大団円など、あまりの神々しさにこのまま天に召されてしまいそうです。 公式ウェブサイトで観る事の出来る1974年のライヴ映像では、ステージの真ん前に白いMellotron M400Sが置いてあるのを確認出来ますが、音から察するにレコーディングではMellotron MARK IIを使用していたのではないでしょうか。
「Demis Roussos/Reflection(BEST)」(1976年 GREECE/画像右)
シングルリリースがメインなので、どれもベストアルバムのようなものですが、これは1976年のベストアルバム。 上記アルバム4曲の他に「Winter Rains」でも、Mike Pinder並のなめらかなMellotron Stringsが登場します。 これ以降、ディスコ調のポップソングやAORをも悠然とこなすDemisですが、どの作品にも品格があります。 大地を揺るがす声量と憂いを帯びた独特のビブラート、神に捧げんとする堂々とした歌唱とそれを支えるMellotronの魔法。 これを聴かずして、一体何を聴けと言うのか!
2007年9月8日
M-Tronの親玉
「MIND OVER MATTER/Music for Paradise」(1986年 GERMANY)
ドイツのミュージシャンでMellotronのウルトラコレクター、Klaus Hoffmann-Hoockのプロジェクト1stアルバム。 彼はMellotron MARK II、M400S EMI、MARK Vなど、13台もの様々なMellotronと貴重なテープ音源を所有していいて、人気Mellotron VSTソフト「M-Tron」のTape Banksや、Mellotronのデジタルクローンたる「MEMOTRON」へ、多くのテープコレクションを提供している事でも有名です。 このMIND OVER MATTERなるプロジェクトは、Klaus Hoffmann-Hoockを中心にシンセサイザーやMellotronを多用した、いわゆるニューエイジミュージックと呼ばれるインストルメンタルです。 全般的にゆったりとしていて、音が現われては消えて行くようなおぼろげな音像は、TANGERIN DREAMほど鋭角的な音やビート感が無く、インド風の東洋志向も含めて喜多郎に近い印象です。 具体的なメロディの提示は少なく、柔らかいベースラインとタブラのリズム、Mellotron StringsやChoir、野鳥の声、川の流れ、虫の声、ジェット機、機関銃、鐘の音などのSEが、ひたすら眠気を誘います。 SEの多くは旅行好きのKlausが旅先で行ったフィールドレコーディングの成果ですが、一部にMellotronのSE音源と思わせる物もあり、マニア心をくすぐります。 Mellotron演奏はKlaus本人と、ゲストプレイヤーのMichael Gruterichが担当しています。
2007年8月31日
PINK FLOYDのMARK II
「ROCKFOUR/Supermarket」(2000年 ISRAEL)
数年前、PINK FLOYDが所有していたMellotron MARK II(John Lennonと同じ黒いタイプ)が、イスラエルのメロトロンマニアの元へ渡ったという噂が流れました。 そしてこのイスラエルの4人組ロックバンドの1stアルバムに、その答えがあります。 1960年代末期のブリティッシュロックをお手本にした内容は、THE BEATLESのポップセンスや、PINK FLOYDの特に1stアルバムのサイケデリックな影響が明確で、豊かなMellotron MARK IIのサウンドと相まって、ポップフリークからプログレマニアまで納得させる魅力的な作品になっています。 Mellotronはバンドの所有では無く、サンクスクレジットにオーナーのZohar CohenとJacob Solomonへの謝辞が記載されています。 1曲目「Government」の頭からMellotron Choirが飛び出してきて、Mellotron M400Sも併用されている事がわかります。(MARK IIにはChoir音源が無い) スローな「Superman」では大々的なMellotron Flute、Stringsに加えて、エンディングにChoirまで重なる大盤振舞い。 続くハードな「Wild Animals」では、エンディングまでMellotron Stringsの嵐になります。 タイトルトラック「Supermarket」でも、Mellotron StringsとFluteの重奏に圧倒されたと思えば、初期のKING CRIMSONを思わせるMellotron Brassの隠し味でダメ押し。 サイケ全開のアルバムラスト「She's Full of Fears」でも、美しいメロディに絡んでMellotron Stringsが鳴りっぱなし。 近年Mellotronサウンドを聴く事の出来る作品は珍しくありませんが、本物のMellotron MARK IIを使っている事や、センスの良いソングライティングを考慮すると、これは一歩抜きん出たアルバムと言えるのではないでしょうか。 メロトロン演奏はキーボードのBaruch Ben Itzhakと、ゲストプレイヤーのNoam Rapaportの2人。
2007年8月30日
PINK CLOUD
「PINK CLOUD/aLIVE」(1985年 JAPAN)
東芝EMI移籍後唯一の作品となった本作は、日比谷野外音楽堂での無観客ライヴレコーディングによる45回転12インチLPです。 3曲目「For Us」は、チャーのピアノ弾き語りをベースにした穏やかなバラード。 曲が始まってほどなくMellotron Choirが重なり、ゲストプレイヤーKanna S.McFaddinのアイリッシュハープが清々しい空気を送り込んで来ます。 Mellotronはオーバーダブされたのでしょうか、ピアノと同時進行で最後の最後まで鳴り続けます。
2007年8月30日
トロンの子守唄
「V.A./NU SKA VI SJUNGA」(2004年 SWEDEN)
1972、73年に録音されたスウェーデンの童謡と子守唄に、2004年録音の1曲を追加した40曲入り作品集。(70年代からカセットテープやアナログレコードがあったようです) 1943年に発行された同名の児童向け歌の絵本を基に、当時の人気アーティストが参加し製作されました。 この作品のプロデューサーで、シンガー(キーボーディストも?)としても参加するPeter Himmelstrandは、スウェーデンのヒット曲を多数手掛ける作曲家で、ABBAの作品にも名前を見つける事が出来ます。 その他のシンガー、Kerstin Aulen、Ingela Forsman、Lennart Grahn、Ola Hakansson、Mona Wessmanらも、当時のスウェーデンヒットチャートや歌謡祭の上位に名を連ねています。 2005年発行のEURO-ROCK PRESS Vol.25で、ANEKDOTENのギタリストNicklas BarkerがこのCDを紹介しているように、8曲(ERP誌では7曲と紹介)でMellotronが使用されるという驚きの児童向け音源です。 1曲目「Nar Lillan kom till jorden」から、母親が優しくギターで弾き語るような曲のバックに、ひんやり冷たいMellotron 3Violinsが登場します。 続く「Sma sma fagelungar」では、息づかいがわかるような生々しいMellotron Fluteが全面に登場し、Mellotronマニアの期待を裏切りません。 「Kungens lilla piga」「Sov du lilla videung」「Blasippan ute i backrna star」「Lilla tussilago」でも、優しいMellotron Flute、Mellotron 3Violinsが登場し、メロトロンな児童(?)をなぐさめてくれます。 また「Lasse liten」と「Blinka lilla stjarna」(きらきら星)におけるMellotron 3Violinsのミックス音量は特別大きく、この作品集の中でもマニアックなトラックとして注目出来るでしょう。 同居するモノシンセも、綺麗なサイン波が愛嬌たっぷりなのですが、イントロからいきなり逆回転サウンドな曲があったりして、なかなか手強いです。 恐るべしスウェーデン児童教育!
2007年8月25日
Elvis Costello
「Elvis Costello/Spike」(1989年 UK)
フジテレビ「とくダネ!」のオープニングテーマ(〜2003年3月)だった「Veronica」を収録した本作「Spike」には、Mitchell FroomのChamberlinがあちこちに登場します。 A面4曲目、ノリのいい「Veronica」がこのアルバム最初のChamberlinソング。 遠くで鳴ってるキュートなトランペットはまさしくChamberlin Trumpetで、途中に少し顔を出しエンディングにバッチリ登場するのはChamberlin 3Violinsでは無く、Chamberlin Celloでしょう。 この曲を聴いてChamberlin Celloの明るく軽快な音色の良さを再認識しました、薄暗いMellotron Celloならこの様な使い方は出来なかったでしょう、ほんとキモチイイ音です。 ちなみにこの曲はPaul McCartneyとの共作で、ベースもPaul(クレジットはHofner bass!)、ドラムがJerry Marotta、キーボードがMitchell Froom、ピアノがFOO FIGHTERSなんかでChamberlinも演奏するセッションマンBenmont Tenchだったりします。 続く「God's Comic」では、中間の転調するところからビブラートが特徴的なChamberlin Fluteが登場します。 他のブラスっぽい音は、同じくMitchell Froomの演奏するHarmoniumかも知れません。 「Satellite」ではChamberlin 3Violinらしき音の断片を、「Miss Macbeth」では、生のストリングスやブラスを加えながらもChamberlin Celloの音を聞き取る事ができます。
2007年8月24日
THE STROKES
「THE STROKES/First Impressions of Earth」(2006年 USA)
1999年デビュー5人組ロックバンドの3rdアルバム。 なにやら70年代のガレージロックリバイバルの代表格とかで、ラウドなギターサウンドを主体としたストレートなロックです。 中でも異色なのは「Ask Me Anything」で、ギターのNick Valensiが弾くMellotron Celloのシーケンスに乗せて、ボーカルのJullian Casablancasが歌う味のある1曲。 Mellotronサウンドの中でも単独での扱いが難しいCelloの音だけ(終盤にMellotron OrganもしくはMellotron Clarinetの様な音も重ねられてはいるが...)で成立しているこの曲は、STROKESの中で異色なだけでなく、膨大なMellotronロックを見渡してもかなり珍しい作品と言えるのではないでしょうか?
2007年8月17日
惑星旅行
「CUSCO/Planet Voyage」(1982年 GERMANY)
ドイツの人気シンガーMichael Holm、ジャズフュージョンバンドPASSPORTのキーボードとしても活躍したKristian Schultzeらが中心となったシンセサイザーインストルメンタルバンド。 リゾート島をはじめ、世界の景勝地をテーマにしたいわゆるBGMブームの作品群で、4作目にあたる本作は「宇宙」をテーマに製作されています。 星座をモチーフにイメージを膨らませた内容は、シンセ丸出しのハイテックなSF感覚はなく、意外と牧歌的なバンドサウンド。 Mike Oldfield風の「Venus」では、泣きのギターに荘厳なMellotron Choirを被せています。 作品中、最も重厚な「Mars」では、Cozy PowellとJeff Beckかと思わせる演奏に、これまたMellotron Choirが重なる構図。 MellotronプレイヤーにはGuenter-Erik Thoenerのクレジットがあります。 1982年の時点でも、ヒューマンボイスにはまだMellotronが有効だったのね。
2007年8月17日
チェンバリン特盛り
「Neil Merryweather/Space Rangers」(1974年 USA)
ブルースハードロックバンドMAMA LION、HEAVY CRUISERで活躍するギタリストNeil Merryweatherのソロアルバム。 このスペイシーでサイケなハードロック作品は、アメコミ風ジャケットが示す通りのいかがわしく大袈裟な演出で楽しませてくれます。 Edgemontなる変名でChamberlinプレイヤーがクレジットされていて、THE BYRDSのカバー「Eight Miles High」を除く他8曲にイヤと言うほどChamberlinが使用されています。 1曲目「Hollywood Blvd.」からChamberlin 3Violinsがたっぷり使用され、終盤にはChamberlin Male Solo Voice、Female Solo Voiceがお遊びっぽく登場してエンディング。 続く「Step in the Right Direction」でもバッキング、リードの境無くChamberlin 3Violins弾きまくり、更にZEP「天国への階段」風な「King of Mars」でもChamberlin 3Violins、Female Solo Voiceが登場。 B面トップ、EARTH WIND & FIREとDonovanが合体したような異様なサイケファンク「Neon Man」、続く本家Donovanのカバー「Sunshine Superman」と、「Road to Hades」「High Altitude Hide'n Seek Escape」でもChamberlin 3Violinsが鳴りっぱなし。 「Sunshine Superman」の終盤には、またもやChamberlin Male Solo VoiceとFemale Solo Voiceの無気味で不自然なコーラスが登場します。 アルバムラスト「Sole Survivor」ではChamberlin 3Violinsに加えてChamberlin FluteとChamberlin Trumpetが登場、最後の最後はTrumpetのフレーズをベンドダウンしながらスイッチオフするサービス満点な荒技で終了します。 Neilのギタープレイにもキレがありボーカルも良く、Chamberlinの大盤振舞い、これは面白いアルバムです。
2007年8月16日
まさしくメロトロンの嵐
「Rustichelli & Bordini/Opera Prima」(1973年 ITALY)
スタジオミュージシャンのキーボーディストPaolo Rustichelliと、後にCHERRY FIVEにも参加するドラマーCarlo Bordiniのユニット、ヘヴィシンフォニック、Mellotronアルバム名盤。 アルバム冒頭「Nativita'」(誕生)から一気に放出される、HAMMOND、ARP、Mellotron等のヴィンテージキーボードの音の塊に度胆を抜かれます。 ベーシスト不在の為、ベースラインまでシンセサイザーで対応しているのも、この半端じゃ無い音圧を支えている要素の一つでしょう。 全然上手く無い伊語ボーカルの熱血度には全てをねじ伏せる力が漲っているし、HAMMONDやピアノと共に煽り立てるMellotronのうねりは竜巻き並の勢力で上昇して行きます。 一体何を食ってどんな生活をすれば、こんなにエネルギッシュになれるんだろう? イタリア人の凄さ、イタリアンロックの熱さには脱帽します。 赤ちゃんを抱いたジャケットもそうですが、「生」を求めるポジティブなイメージの楽曲が並んでいるのも素晴らしい。 圧倒的なMellotronと溢れる生命力、音楽にこの他何を求める必要があろうか!
2007年8月16日
マグナム
「MAGNUM/Kingdom of Madness」(1978年 UK)
以前からずっとヘビメタかと思っていました...そんなMAGNUMの出発点がかなりポップだとわかる1stアルバム。 キーボーディストを含む5人編成で、アルバム冒頭から分厚いポリシンセとYESやQUEENを思わすコーラスワークが爽快なブリティッシュハードポップ。 英国産らしい湿度の高いメロディを、派手なアレンジとキレのある演奏で聴かせる妙味に、Mellotronをたっぷり加えて美味しく仕上げています。 キーボードのRichard Baileyは、アルバムB面5曲中4曲にMellotronを演奏しています。 「All That Is Real」「The Bringer」「Lords Of Chaos」では壮大なMellotron Stringsが登場し、「All Come Together」ではMellotron Choirも加わりドラマティックに盛り上げています。
2007年8月15日
小春日和
「INDIAN SUMMER/Indian Summer」(1971年 UK)
SPRINGやTON TON MACOUTEなど、魅力的な作品の揃うNEONレーベルの第三弾。 60年代末期プログレ前夜の雰囲気が微かに残るこのアルバムは、HAMMONDオルガンやジャジーなギターがいかにもブリティッシュ然としていて、地味ながらも長く愛聴される評価の高い作品です。 各プレイヤーの力量は高いにもかかわらず、ソロで出しゃばる事無く絶妙なサジ加減で進行する様子は、スルメの様に聴けば聴くほど味が出て来ます。 オープニングの「God is the Dog」から、いい塩梅でMellotron Stringsが登場しますが、同時に流れるMellotron風のコーラスは生の人声でしょうね。 「Glimpse」「Secrets Reflected」での淡々としたMellotron Stringsも良いし、アルバムのハイライトと言える「Half Changed Again」における、熱のこもったHAMMONDオルガンへのMellotronの援護射撃には、これぞブリティッシュロックの醍醐味と拳を握りしめます。 饒舌なドラマー(スネアのロールが素晴らしい)や、苦く渋い声のボーカルと、聴きどころ多く全方位好バランス。 Bob Jacksonはキーボードとリードボーカルを担当。
2007年8月15日
2005年 北欧産
「WOBBLER/Hinterland」(2005年 NORWAY/画像左)
2004年、当サイトの掲示板に「I like sushi and mellotron! Check out the prog-rock band Wobbler. They use mellotron!」と外人さんの書き込み(メンバーか?)がありました。 Wobblerって何? Wobblerって誰? 当時はまだCDもリリースされておらず無名のバンドでしたので、紹介されて訪れたオフィシャルサイトの気迫溢れるデモ音源とMellotron偏愛画像に驚かされたのでした。 WOBBLERは、70年代プログレを再構築したANEKDOTENやANGLAGARDの手法を借りながらも、音の凶暴さや曲の複雑さを控え、Mellotronの美しさをアンサンブルの全面に出す曲作りに徹しているのがわかります。 キーボードのLars Fredrik FroisleはWHITE WILLOWのメンバーでもあるのですが、同傾向の作品でありながら酷かったWHITE WILLOWの1st(1995年)等とは比べ物にならない程の進歩を確認する事が出来ます。 プログレ的フレーズ(モロは御愛嬌)をちりばめ、良質かつ大量のMellotronを受け入れる曲作り(曲よりもまずMellotronのフレーズありきか?)、これはMellotronロックの一つの完成型を示したのかもしれません。 Mellotron ArchivesのMarkus Reschが手をかけたMellotronが鳴りまくる、2000年代Mellotronロック基準盤。
「BLACK BONZO/BLACK BONZO」(2005年 SWEDEN/画像右)
まさか2ndアルバムまでもリリースされるとは正直思わなかった彼らの、衝撃的1stアルバム。 70年代のプログレ基準確立、80年代のプログレ混迷停滞、90年代のプログレ再構築を経て、それぞれの時代のアイコンをリミックスすることで、いとも簡単に70年代本場仕込みのバーチャルプログレッシヴロックを体感出来る時代がやって来た。 1曲目からHAMMONDとMellotronが全開、ファルセットコーラスまで加わってURIAH HEEPの幻影を見ているようです。 あまりのソックリさんぶりに、本気になればいいのか笑えばいいのか微妙な空気も漂いますが、ここまでやり通せば痛快! 5曲目「Fantasy World」のMellotron Flute苺畑、7曲目「Sirens」のMellotron Strings宮殿と、後半に進むにつれてMellotron度が高くなります。 キーボードのNicklas AhlundはこのレコーディングでSample Mellotronを使用したらしく、本物のMellotronは今後導入予定だとか。 これからの曲作りは、良いメロディを探す事よりも、いかにして元ネタに似ないように作る事が重要だったりして?
2007年8月13日
ソフトロック宝探し
「SAGITARIUS/Present Tense」(1968年 USA/画像左)
コロムビアレコードの仕掛人Gary Usherと、ソフトロックの中心人物Curt Boettcherのプロジェクト。 当時未発表に終ったCurt BoettcherのバンドTHE BALLROOMや、平行して進められていたTHE MILLENNIUMのデモテープを基に、追加レコーディングと様々な加工を施した、美しいコーラスと幻想的な音触を持ったソフトロック名盤。 「Would You Like to Go」のエンディングを飾る人工的なストリングスサウンド、「Musty Dusty」の中盤からエンディングまでリズムを刻むストリングスサウンドなど、Mellotronマニアの間では何度も話題になってきた音を見つける事が出来ます。 このアルバムを聴くたびにMellotronではないかとハッとさせられますが、ClaviolineやHarmoniumなどのシンセ以前の楽器、もしくはオルガンの音にも聴こえます。
「THE MILLENNIUM/Begin」(1968年 USA/画像右)
Curt Boettcherを中心に1966年に録音が開始されながらも、前衛的すぎるとの理由から1968年の9月までリリースが遅れたソフトロックの問題作にして傑作。 16トラックで録音された最初のレコードで、当時CBSが最も金をかけて製作された作品と言われています。 「The Know it All」でのスペイシーなストリングスや怪しいフルート、CBSコロムビアのコマーシャル(パロディ?)「Anthem(Begin)」の最後の最後に流れるストリングスサウンドの断片等、疑惑の音があちこちに出て来るもののMellotronと断言するにはちょっと怪しいような気がします。 1966年のアメリカレコーディングですので、Mellotron導入には少々早いかもしれません。(ならばChamberlinか?) 華麗なコーラスワークとカラフルな音の万華鏡、ここはMellotron云々という視点を忘れてアルバムを楽しむ事が正解でしょう。
2007年8月5日
太陽と戦慄
「KING CRIMSON/Larks' Tongues in Aspic」(1973年 UK)
三河産大衆車のテレビCMでKING CRIMSONが再び起用され、お茶の間から衝撃的な「Easy Money」が流れて来ました。 その「Easy Money」を収録する本作は、オリジナルメンバーの詩人Pete Sinfieldの世界観を具体化してきた初期スタジオ録音4作品を経て、Robert Fripp以外のメンバーを一新しての1作目となります。 Robert FrippのギターとDavid Crossのバイオリンに、それぞれ1台づつのMellotron M400Sが対を成す中、John Wettonのベースがブイブイ割り込む構図。 そしてJamie Muirのパーカッションが、イントロからアウトロまで病的な音で狂気の沙汰を演出し、Bill Brufordのドラムを牽引しています。 ジャケットの一体になった太陽と月は、ヘヴィメタルからクラシックまでの相反する要素を同居させたアルバム内容を体現しているように思えます。 ロックのグルーヴとは無縁な「Larks' Tongues in Aspic,Part One」で脳みそ引っ掻き回された思えば、続く「Book of Saturday」で気を取り直し、「Exiles」のMellotron Celloと3violinsで癒されます。 B面トップ、死臭漂うパーカッションとMellotron 3Violinsも無気味な「Easy Money」を過ぎて、「The Talking Drum」をイントロとする「Larks' Tongues in Aspic,Part Two」への地獄行き超特急は進みます。 この辺の緩急の付け方はCRIMSONのお家芸とも言える流れで、アルバム最後まで違う曲調を並べながらも全体として統一された印象でアルバムをまとめる手法は流石です。 こんなに強烈で邪悪な音を出しながらも、デス声で歌うボーカルなんていないし、ヘビメタファッションのメンバー(変な毛皮を纏った人はいたけど)はいないし、優しそうな人がバイオリンを弾いてるし、ギタリストは椅子に座ってるし...こいつら普通じゃないね、やっぱり。 若人よ、テレビCMが気になったら偽物ばかりのJ-POPや腐ったヒップホップなど捨てて、迷わずKING CRIMSONのCDを買いなさい!
2007年8月2日
ケンとメリーのBUZZ
「バズ/レクヰエム・ザ・シティ」(1974年 JAPAN/画像左)
小出博志と東郷昌和のデュオ、ライブアルバムを挟んでの実質的2ndアルバム。 日産スカイラインのCMソング「ケンとメリー〜愛と風のように〜」でデビューする以前から、プロデューサー高橋信之(成毛滋と結成したザ・フィンガーズのメンバーで、高橋幸宏の実兄)とはバンド活動を共にしていたようです。 和製フォークデュオらしからぬ垢抜けた作風は、いわゆるソフトロック的なバタ臭さがあり、本作もサディスティック・ミカ・バンドをバックに従えた意欲的な作品になっています。 タイトルの通り「街」や「都会」をテーマにしたトータルアルバムは、はっぴいえんど「風街ろまん」の影響も感じさせますが、アルバムB面1曲目のインストルメンタル「レクヰエム I」は、プログレッシヴなアレンジで驚かされます。 二人のコーラスがリードするバックをMellotron Choirが支え、Hammondメインで曲展開の後、再びMellotron Choirの大合唱になります。 続く軽快なAORナンバー「まちのうた」のバックには大量のMellotron 3Violinsが流れてくるのですが、このKING CRIMSON「宮殿」級の無定位なスケール感は、特筆すべきものがあります。 A面の「今朝の手紙」にも、清々しいイメージでMellotron Choirが使われています。 Mellotronのクレジットは、高橋信之とサディスティック・ミカ・バンドの今井裕。
「バズ/バザール」(1979年 JAPAN/画像右)
1976年のアルバム「君を迎えに来たよ」に先行してシングルカットされた「わかれ〜詠訣〜」(1975年)には、Mellotron 3Violinsが使用されています。 イントロやミックスの違うこのシングルバージョンは、1979年のベストアルバム「バザール」に納められました。 切ないサビをSolinaの伸びるストリングスと共に歌い上げた後から、徐々にMellotron Fluteが重なる凝ったアレンジには、Mellotronサウンドへのこだわりが感じられます。 キーボードには東郷昌和、今井裕を含む4名のクレジットがあります。
2007年4月27日恵比寿LIVE GATEに於けるバズのライヴ後に、情報を提供して頂いたyes.tさんがお二人に直接お話を伺う機会があり、Mellotronも話題に挙げて頂きました。 それに寄ると、「わかれ〜詠訣〜」でSolinaとMellotronを同時に使い分けた事を良く覚えているそうです。 1974年〜76年までバズとしてMellotron M400Sを所有していたものの、レコーディングで使用した以外はステージで1回使ったきりで、やはり動作不安定なのがネックだったようです。
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情報提供 yes.t氏
2007年8月2日
CD&RECORD
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