■ HISTORY |
1946年 ■アメリカ、カリフォルニアのハリー・チェンバリン(Harry Chamberlin)は自分のオルガン演奏を友人に聴かせるため、テープレコーダーに録音していた時、テープデッキそのものをオルガンの中に組み込めないだろうかと考えた。 そのアイディアが「テープを再生するオルガン」いわばサンプラーの概念の原形であった。 1948年 ■カリフォルニア、アップランドの自宅ガレージで自ら製作したテーププレイバック式リズムマシン「Chamberlin Model100 Rhythmate」を販売し好評を博す。 1951年 ■「Chamberlin Model200」を発表。 1956年 ■ハリー・チェンバリンは「Chamberlin Instrument社」を正式に発足させ、カリフォルニア、アップランドに工場を構え、本格的に製造と販売を開始する。 1959年 ■「Chamberlin Model400」発表。 1960年 ■カリフォルニア、オンタリオに新工場建設。 ■音源テープはハリー・チェンバリンの自宅に於いて、ローレンスヴェルクオーケストラ(Lawrence Welk Orchestra)のミュージシャン達によってレコーディングされた。 ■「Chamberlin Model100 Rhythmate 25/35/45」シリーズ、「Chamberlin Model300/350 remotes」を発表。 1961年 ■NAMMショーに「Chamberlin Instrument社」初出展。 ■ビル・フランセン(Bill Fransen)が「Chamberlin Instrument社」のセールスマンとして働きはじめる。 ■3ヶ月に1台程度のペースで楽器を製造している頃、ビル・フランセンはセールスの成果をあげるが、生産が追いつかない。 ■基本的構造の欠陥で最悪の場合、音源テープ破損。採用している磁気テープヘッドの品質の悪さで発音不安定といったトラブルが続出。 ■「Chamberlin Model500」を発表。 1962年 ■ビル・フランセンは「ハリー・チェンバリンの楽器は原理的には素晴らしいが、彼はテープシステムの問題を解決できない」との結論を出す。 ■ハリー・チェンバリンとビル・フランセンは、動作良好な新型モデル「Chamberlin Model600 Music Master」2台をイギリスへ持ち込み、新たな販路を開拓するため、問題を解決し生産を請け負ってくれる相手をを探した。 ■磁気テープヘッドやアンプ等の電気機器の製造販売を行っていた「ALDRIDGE ELECTRONICS社」のレスリー・ブラッドレー(Leslie Bradley)、ノーマン・ブラッドレー(Norman Bradley)、フランク・ブラッドレー(Flank Bradley)三兄弟は、ロンドンに滞在していたビル・フランセンから70個の磁気テープヘッドが一体になった特殊な物を受注する。 ■ブラッドレー兄弟は幾度かの交渉の後、特殊な磁気テープヘッドの用途が楽器だという事を知り、未来を予見して、修理やメンテナンスを請け負う。 ■ビル・フランセンとブラッドレー兄弟はロンドンで各方面との交渉の末、資金の調達に成功。バーミンガムに新型楽器の製造工場を確保し「Bradmatics Manufacturing社」を設立。 ■「Chanberlin」の複製モデルである、試作の楽器が完成。 1963年 ■社名を「BRADMATIC社」からバーミンガム郊外のStreetlyへの移転を機に「Streetly Electronics社」へ変更。 新型楽器の製造元として機能する事となる。 ■独立系レコーディングスタジオ大手のI.B.C.スタジオ(International Broadcasting Company)率いるジョージ・クルーストン(George Clouston)が、「Mellotronics社」を設立しロンドンを拠点に、経営、販売、流通、販促、音源テープの録音及び製造を開始する。 ■ブラッドレー兄弟はイギリスのオーケストラの指揮者エリック・ロビンソン(Eric Robinson)、ビートルズのレコーディングにも参加した事があるチェロ奏者、レジナルド・キルビー(Reginald Kilby)、後に名エンジニアとして名を馳せる事になるグリン・ジョンズ(Glyn Johns)、マジシャンのデヴィッド・ニクソン(David Nixon)らを起用し、I.B.C.スタジオにてバイオリン、フルート、チェロ等の音源を新型楽器用の音源として録音開始。 ■新型楽器に「MELOdy」「elecTRONics」を合わせた造語「Mellotron」と命名し「Mellotron MARK I」を発表。 「Mellotronロゴ(1970年代以降のもの)」 ■12月11日、最初のMellotronが工場より出荷された。 ■ブラッドレー兄弟の事業は、ビル・フランセンとの交渉のみで行われており、「Chamberlin Instrument社」の特許や知的所有権を侵害している恐れがあった。 1964年 ■「Mellotron MARK I」へ改良を加えた「Mellotron MARK II」を発表。 「Mellotron MARKII広告」 ■エリック・ロビンソンらの手によって、Mellotron MARK IIのデモンストレーションレコードが製作される。 「Mellotron Demonstration Record」 ■「Streetly Electronics社」で18ヶ月間、製品の調整や出荷前テストのプレイヤーをしていたマイク・ピンダー(Mike Pinder)は、THE MOODY BLUES参加のため退社。 1965年 ■「Mellotron FX Console」を発表。機械音や動物の鳴き声等の効果音を主な音源とし、映画のサウンド・トラックやTVの仕事に適していた。 1966年 ■特許、知的所有権でもめていた「Chamberlin Instrument社」と「Mellotronics社」は、ブラッドレー兄弟側がハリー・チェンバリン側に3万ドル支払う事で和解。 晴れてハリー・チェンバリンの考案したテーププレイバック式キーボードの特許を取得した。 1967年 ■イギリスBBC放送が、テレビ番組「FOLEY」シリーズのために、スペシャルエフェクトテープを発注。 追加の「Mellotron FX Console」を3台購入。 1968年 ■ポータブルな「Mellotron MARK II」として開発された、「Mellotron 300」発表。 「Mellotron 300広告」 1969年 1970年 ■「Mellotron M400S」発表。 「Mellotron M400S広告」 ■「Chamberlin M1/M2/M4」シリーズ、「Chamberlin Model800 Riviera」を発表。 ■「EMI社」より「Mellotron M400S EMI」を100台受注。アッセンブルはEMIで行うため、パーツで納入。 ■「Mellotron 400FX SOUND EFFECTS CONSOLE」発表。 1971年 1972年 ■LONDON MUSIC EXPOのショーモデル用にクリアボディの「Mellotron M400 Acrylic #1」を製作。 1973年 1974年 1975年 ■「Mellotron M400S」を2台並列につなげた「Mellotron MARK V DualManual」発表。 「Mellotron MARK V広告」 1976年 ■ロンドンの「Mellotronics社」は世界市場への配給に失敗し、負債を抱え経営悪化。 ■アメリカ、ニュージャージー「Dallas Arbiter社」(後のDallas Music Industries社。系列会社、イギリスDallas社、ドイツ、オーストリアDallas Arbiter社)のBill Eberlineが「Mellotron」の代理店契約を結び、一時的に売り上げが伸びるものの「Mellotronics社」を巻き込んでの経営不振に落ち込む。 「Dallas Arbiter広告」 ■「Chamberlin Model20/30/40 Rhythmate」シリーズ発表。 1977年 ■「Dallas Music Industries社」のビル・エバーライン(Bill Eberline)が「Mellotron」の商標権と「Mellotronics社」を買収。 「Dallas Music Industries広告」 ■「Mellotron」の商標権を失った「Streetly Electronics社」は同楽器をやむなく「NOVATRON」に改称。 ■「Streetly Electronics社」は、自社販売分「Mellotron M400S」を「NOVATRON 400」に改称。 「NOVATRON 400広告」 ■「Streetly Electronics社」は、自社販売分「Mellotron 400FX SOUND EFFECTS CONSOLE」を「NOVATRON 400FX SOUND EFFECTS CONSOLE」に改称。 ■「Streetly Electronics社」は、自社販売分「Mellotron MARK V DualManual」を「NOVATRON MARK V」に改称。 ■ビル・フランセンは楽器とテープの販売網を確保するため「SOUND SALES社」を設立。 「Streetly Electronics社」から3500ドルで納入販売されている「NOVATRON 400」を「Mellotron 400SM」として4500ドルで販売。 1978年 1979年 ■11月29日、フランク・ブラッドレー心臓発作のためこの世を去る。 1980年 ■「Mellotron」の商標権を取得した「Mellotron USA/Bomer Fabricators社」は80年(〜83年)アメリカを拠点として営業開始。 1981年 ■「Chamberlin Instrument社」閉鎖。 ■「Mellotron USA/Bomer Fabricators社」、一度に4音色を再生できるマルチトラックヘッドを装備した「MELLOTRON 4TRACK」を発表。 「MELLOTRON 4TRACK広告」 ■「Streetly Electronics社」は「NOVATRON 400」をフライトケースに収めた「NOVATRON T550 Flight Case Version」発表。 「NOVATRON T550広告」 1982年 1983年 1984年 1985年 1986年 ■「Streetly Electronics社」業績悪化とイギリス国内の不況で倒産。 ■「Mellotron USA/Bomer Fabricators社」の資産を「Mellotron Digital社」が引き継ぐ。 ■「Mellotron Digital社」はNAMMショーで「MELLOTRON ES-2000XT/AT」を発表したが、資金不足で発売にいたらず。 「MELLOTRON ES-2000XT広告」 ■「Mellotron Digital Studio Symphony」発表。 「Mellotron Digital Studio Symphony」 1987年 1988年 ■「Streetly Electronics社」NOVATRON MARK VとT550の生産を終了。 ■「Mellotron Digital社」活動停止。 1989年 ■デヴィッド・キーン(David Kean)はブラッドレー兄弟の所有するテープ、パーツ、製作機材一式と「Mellotron Digital社」が所有していた「Mellotron」の商標権と音源を買い取り「Mellotron Archives社」を設立。 ■イギリスではレスリー・ブラッドレーの息子ジョン・ブラッドレー(John Bradley)がマーティン・スミス(Martin Smith)と共に「Streetly Electoronics社」を立上げ、レストア、販売から部品供給、新作音源のテープ製作を行っている。 1990年 ■「Mellotron Archives社」のデヴィッド・キーンはエンジニアのマーカス・レッシュ(Markus Resch)を加え、音源テープとスペアパーツの製造を開始。 1991年 ■「Mellotron Archives社」は「Mellotron MARK II」の音源を「Mellotron M400S」へ供給するためにテープライブラリーを製作。 1992年 1993年 ■「Mellotron Archives UK」設立、運営は「Streetly Electoronics社」。 1994年 ■「Mellotron Archives社」が、AKAIフォーマットのデジタルサンプラーへMellotron音源を供給すべく、マスターテープからサンプリングしたCD-ROMを発売。 「Mellotron Archives CD-ROM」 1995年 1996年 1997年 ■「Streetly Electoronics社」は「Mellotron Archives UK」としての活動を停止。 ■レスリー・ブラッドレーこの世を去る。(1916〜1997) 1998年 1999年 ■「Mellotron Archives社」が「Mellotron M400S」の改良新型「Mellotron MARK VI」を発表。 「Mellotron MARK VIカタログ」 2000年 ■「GForce社」が、ヴァーチャルメロトロンのソフトウェア「M-Tron」を発表。 2001年 ■「Mellotron Archives社」の所有権がデヴィッド・キーンからエンジニアのマーカス・レッシュへ完全移譲され「Mellotron社」(Mellotron, Inc.)に社名変更。 以後、アナログとデジタル両方の機器開発が進められる。 2002年 2003年 ■「Streetly Electronics社」が「M400S」と「T550」の改良新型を生産すると発表。 それに伴い工場設備も一新し、規模を拡大した。 2004年 2005年 ■「Mellotron社」が「Mellotron MARK VI」2台を並列につないだモデル「Mellotron MARK VII」を発表。 ■「Streetly Electronics社」が、英国人デザイナーのポール・スミス(Paul D.Smith)とと共同開発した新型メロトロン「SKELLOTRON」を発表。 M400系メロトロンの基本構造をベースにし、真鍮やアクリルを多用した斬新な外観を持つモデル。 ■「Streetly Electronics社」が、新型メロトロン「STREETLY M4000 MELLOTRON」のリリースを正式アナウンス。 ■「Manikin Electronics社」が、メロトロンをサンプリングしたデジタルデータを再生する「Memotron」を発表。 2006年 ■9月29日、ノーマン・ブラッドレー、パーキンソン病のためこの世を去る。(1922〜2006) ■12月18日、Mark IIからM400Sまで、黄金期Mellotronの電気設計を担当していたPeter Leversleyが、心臓発作のため70歳でこの世を去る。 2007年 ■「Streetly Electronics社」が、新型メロトロン「STREETLY M4000 MELLOTRON」を出荷開始。 MODEL300以来40年振りとなるステーション構造(サイクリング構造)を備えたメロトロンとなる。 「STREETLY M4000カタログ」 ■「Clavia社」が「Mellotron社」からオリジナルのメロトロン音源の使用ライセンスを獲得する。 2008年 2009年 2010年 ■「Mellotron社」はNAMMショーで、オリジナルのメロトロン、チェンバリン音源を再生する「Digital Mellotron M4000D」を発表。 ■「Clavia社」が「Mellotron社」からオリジナルのチェンバリン音源の使用ライセンスを獲得する。 2011年 2012年 2013年 ■「Mellotron社」はNAMMショーで、Digital Mellotron M4000Dの小型版「Digital Mellotron M4000D MINI」を発表。 2014年 2015年 2016年 2017年 2018年 2019年 2020年 2021年 2022年 2023年 |