ARTIST INDEX

■ TRIVIA [2/2]
M400S、Mk VI、Chamberlinの(プチ)音色比較
 縁あって、Mellotron Mk VIが我が家にやって来ました。 少し背が高く、わずかに黄味がかった白い匡体は、先住Tronが可哀想に見えるほど綺麗なものです。 凸角だけでなく凹角まで綺麗に面取り(Rがけ)された外観は、M400と同じテーマながら、少しでも近代的に見せようとする意図が感じられます。 真空管を使用した内部構造など、MARK IIのテイストも取り入れようとした最新型Mk VIの音はどのようなものでしょう。 比較対象は、70年代のオリジナルテープを使用した古いM400S#714 3Violinsと、現行テープを使用した最新型Mk VI#031 3Violins。 そしてMellotron 3Violinsと共用のマスターテープと言われるChamberlin 3Violinsは、Mellotron ArchivesのCD-ROMから音を取り出したものになります。(それぞれノンエフェクト、ドライ録音) 素人による演奏、録音の為、サウンドサンプルには難点がありますがその辺はお許しを・・・。 こちら「Mellotron M400S 3Violins」「Mellotron Mk VI 3Violins」「Mellotron Archives CD-ROM Chamberlin 3Violins」をクリック。

 M400Sの時代掛かった音、Mk VIのクリアでHiFiな音、同じ音源であるはずのChamberlinはさらに雑味のない乾いた音がします。 楽器の状態等、完全なイコールコンディションでの比較ではありませんが、それぞれの雰囲気だけでも味わえたでしょうか?

mp3データ変換 Buchi氏

2006年12月1日
Living in a Magnetic Tape
 Mellotronの音源テープは、元々1本の磁気テープがリールに巻かれている状態で、テープに施されているマーキングを基準にカットし、それぞれの鍵盤にセットすることではじめて正常に再生されます。 テープがループ状になっておらず、スプリングによって常に同じ部分から再生されるような特殊構造のMellotronでは、セットされたテープのすべての部分が再生されているわけではありません。 ストッパーに繋がれているテープ端末部分や、スプリングに引っぱられるだけの部分もあるのです。 では、そのテープを切る前に、連続して再生すると一体どうなるのでしょうか?
似たようなモノとして、MellotronのオーディオサンプリングCDを連続して再生する事が想像出来ます。 サンプルされたMellotronサウンドが半音づつ上昇しつづける、究極のMellotronソングが再生される事でしょう。 元ヒカシュー、イノヤマランドの井上誠さんより、面白いテープがあるんですよと、大変貴重な音源を御提供いただきました! では、答えはこちら「
男声コーラス(Male Choir)」「混声コーラス(8Voice Choir)」をクリック。

 レコーディング中、コーラス隊がピアノにピッチを合わせ、次の発声に向けて咳払いをしたり、リラックスして談笑する音まで聴く事が出来ます。 なんともアナログ的で、Mellotron的な人間味が溢れているではありませんか! 謎の新鋭楽器に使用される音源のレコーディングが、和やかに進行していた様子が伺えます。 古い文献に「Mellotronのテープには弦楽奏者が弓を置く音まで入っている。」という記述があり、それを読んだ時は半信半疑でしたが、どうやらそんなことはたくさんありそうですね。

音源提供 井上誠氏(元ヒカシュー、イノヤマランド)
mp3データ変換 Buchi氏

2006年9月26日
新●月コンサート(あるいはMellotron日和)
 2006年4月6日の日曜日、四半世紀振りという新●月のライヴに行ってきました。 告知直後はそれほど気にしていなかったものの、キーボードの花本さんがライヴの為にMellotronの修復をされている事を知ってから、これは是が非でも行かねばならぬと勇んでチケットを入手したのです。 せっかくだから自分のMellotronにサインしてもらいたいなあと思い、トップカバーを担いで行こうと考えましたが、さすがにあんな大きなベニヤ板を持ってたら怪しまれそうなので、断念。 鍵盤横の小さいパネルとマジックを持参して行く事にしました。 貴重なMellotronライヴを観るのだから、開演前に渋谷のイケベ楽器鍵盤堂にあるNOVATRON(MJさんに教えてもらった)でも眺めてから行くかと思い、渋谷へ向かいました。 地下へ降りるように店内へ入ると、所狭しと並んだキーボードの影に白っぽいNOVATRONが置いてありました。 以前、NOVATRONを見た時にも同じだったのですが、匡体の仕上げが梨地塗装のような質感で、建築外壁に塗るプチプチしたペンキのような印象です。 脚は私のM400Sとは違い、ボディと同色で、少し厚みがあり大きく見えます。 鍵盤の歯並びも綺麗で状態は良さそうですが、現在は調整中との事です。 よく見ると、このNOVATRONの色がライトブルーもしくはライトグリーンをしている事に気が付きました。 店内照明の関係でハッキリしないのですが、白ではなかったと思います。 これはオリジナルカラーなのか、それともリペイントなのか? いいなあ、欲しいなあ...でも非売品だそうです。

 そこから歩いて、ライヴ会場のある原宿へ向かい会場入り。 おおーっ、今日2台目のMellotronだと思ったら、後ろにも1台! 1日に3台もMellotronが見られるなんて、幸せだなあ♪ ステージ左から高橋さんのドラム、その後ろに小久保さんのサポートキーボード、その右に鈴木さんのベース、中央に北山さんの立ち位置、その右後ろに津田さんのギター、その後ろに清水さんのサポートキーボード、一番右に花本さんのキーボード群というステージセッティング。 ドラムはロートタムがずらりと並ぶ70年代末期から80年初頭を思わせる、まさしく新月全盛期の流行を回想させる素晴らしい選択。 スネアもロートタムみたいな構造の特殊なものでした。 頭上中央にトップシンバルを置き、その左右にも各種シンバルが並び、右側にもクローズドハイハットをセットして、足下は26インチ(24インチだったか?)のツーバス。 しかも、いわゆる現代的なラックを使わずに、普通のスタンド類でセッティングするところなど、アナクロ嗜好の私には、たまらない物でした。 アタックのみの独特のロートタムサウンドは、片手でのタムタム連打を多用する高橋さんのドラムスタイルと音質がとても良くマッチしていました。 鈴木さんのベースは、フェンダーのプレシジョンかジャズベース。 弦、フレットのすべてと最小から最大の音量まで駆使したダイナミックな演奏は思わず見入ってしまいました。 しかもボディを抱えてネックを下に下げた、バタやんポジションも素敵。 自らのMCで紹介した曲では、短いドライバーのような金属棒でピッキングして、シタールとベースを混ぜ合わせたような中近東サイケなサウンドを作っていました。 小久保さんのキーボードは、Roland A-37MIDIコントローラーをメインに据えて、その上段にはProphet5が鎮座。 北山さんは、バンドメンバーが拍手の中登場した後、後ろからスタスタと登場してきました。 そのオーラに私は緊張しましたが、会場の拍手がすべて途絶えたので、やはり他の皆さんも息を飲む一瞬だったと思います。 「こんにちは、新月です」の一言で曲が始まるその素っ気無さは、あまりに強烈なロックコンサートのオープニングでした。 声の衰えは全く感じず、きっと79年もこんな感じだったのだろうかと想像を膨らませました。 津田さんのレスポールは、サスティナー付きのバーニーでしょうか? まさしく、Steve HackettやRobert Frippを彷佛とさせるロングサスティーンが美しかったです。 あんなに超絶プレイをしながらも、顔色ひとつ変えず弾きこなす姿は、驚嘆ものでございました。 清水さんのキーボードはステージ後方横向きに白いMellotron M400S、その上は恐らくKORG DW-8000でしょうか? そして正面向きにFender Rhodes。 開演前のスタッフによるMellotron試奏では、Fluteが鳴っていました。 その他、3Violinsもライヴでは確認出来ました。 なんとなく背が低いなと思ったら、オリジナルの脚ではなく、金属の何かが取り付けられていました。 バックパネルの端っこや、トップカバーの隙間から黒いペイントが見えたので、元は黒いMellotronで、白くリペイントされたものではないかと思います。 DW-8000からは、MIDIによってMellotron Choirらしき音が聴こえたのは、空耳か? 花本さんのキーボードブース正面は白いMellotron M400S、その上にELKA、横向きにHammond、その上にRoland SH-1000。 ステージの右端はYAMAHAのCP、これはまさしくあの頃のGENESIS! 背面側のキーボードは、残念ながら確認出来ませんでした。 前日のネットの情報によると、ライヴ初日のMellotronはアンコールのみだとの事だったのですが、両日行っためだまやきさんによると、初日も素晴らしいMellotronサウンドがたっぷりと堪能できたそうです。 と言う事で、2日目も、1曲目からMellotron Celloが全開! その後も3Violins、フルートと使用されています(嬉) 演奏中、照明の具合でMellotronの白いペイントの下に「○○アイスクリーム」と書かれているのを発見。 「明治」か「雪印」か、それとも「新月」と書かれていたのか、曲を聴きながら、そんなことばっかり考えてました。 そういえば、なんかの記述にそんなMellotronの事が書かれていたのを思い出した。 Mellotronの状態は、北山さんがCPで弾き語る「武道館」の時に、わずかに音程が下がって(リアルMellotronの醍醐味。 悪い意味ではありません♪)いたのを除けば、大変安定していて、素晴らしい音を響かせていました。 もちろん「鬼」のMellotron Fluteソロなんて、まさしくアノ音であり、寸分違わぬ運指で79年を再現していました。 最近、涙もろくなってきた私は、Mellotronが鳴る度に涙、北山さんが電飾箱男で歌い上げれば涙、と、感動しっぱなしの2時間で、公演終了。 サインをもらえないかとわずかな期待もむなしく、ライブの直後に友人と待ち合わせていたので、後ろ髪を引かれながらも(引っぱられる髪は無いけどね...ふっ)終演後すぐに退席しました。 友人と買い物、食事を済ませ、駅へ向かっていると、大量のハードケースが目の前で搬出されていました。 そこがライヴ会場の横という認識が無いまま、なんとなく眺めていると、プロテクトマフに包まれたMellotronが夕暮れの原宿に登場。 仰天しながら、これはもしかして! と思うのもつかの間、ギターを持った津田さんが出てこられて、私のテンションは最高潮。 左から私の視界に花本さんが入ってきました。 まさか2時間後、偶然会えるとはーっ! こんなチャンスを逃すわけには行かない私は、Mellotronのパネルとマジックを掲げて「花本さ〜ん、サインもらっていいですかっ!」と、クルマに乗り込むドアを開いて声をかけ、サインをねだりました。 物腰の穏やかな方で、突然の私の登場にも気持ち良く対応してくださいました。 私が、自己紹介をすると、花本さんは笑顔で「これ僕のMellotronのツマミ!」と、コントロールノブをポケットから出しました。(なんで外れていたのかは謎) 私のMellotronパネルを受け取って瞬時に「これは鍵盤右側のパネルですね。 しかもオリジナルコンディションだ。」と言い「新●月 花本 彰」とサインをいただきました。

Taka「今日、Mellotronすごく調子が良かったですねぇ。」
花本さん「そう? 昨日はもっと良かったんだよね、こんな事言うと怒られちゃうかな。」
Taka「いや、そんなことないですよ〜、かなり状態がイイんじゃないですか?」
花本さん「新しいMellotron MARK VIってどうなの?」
Taka「すごいですよ、デジタルサンプラー並に安定してます。 テープはFluteとCelloと3Violinsですよね? 後ろのMellotronはChoirも入ってました?」
花本さん「いや、2台共同じテープ。 Flute、Cello、3Violins。」
Taka「確か、新品のテープでしたね。 2台共、花本さんのMellotronですか? 」
花本さん「後ろのは、レオミュージックさんから借りたんだよね。 僕のはモーターコントロールカードをスウェーデンから買って新しくしたんだけど、やっぱダメだね。 ピンチローラーがダメなのかなあ。 あれも1個いくらなんて売ってるよね。 借りたやつはカードがCMC-10のままなんだけど、すごい安定してるんだよ、だからカードだけじゃないね。」
Taka「ピンチローラーのちょっとした事が、テープにストレスをかけてるんでしょうかね。 もしあれなら、キーボードアッセンブリーで交換したらどうですか?」
花本さん「そんなのもあるの? 400にも付くんだ。 MARK VIっていくらするの?」
Taka「多分80万円位ですかねぇ。(価格は勝手な想像です。)正規輸入も決まったんですよね、Five G(厳密には関連会社の福産起業さん)が入れるんです。」
花本さん「と言う事は、○○さんのとこか。 なんだっけスウェーデンのMarkusだっけ? 何度もメールでやりとりしたよ。」
Taka「Markus Resch! あっそうですそうです、Mellotron Archives。 この人(友人)Markusとお友達なんですよ。」
友人「はじめまして、私は今、ロスに住んでいるんですけど、MarkusはアメリカへMellotronの修理によく来るんで、知ってますし、私の家には修理をする為のMellotronが出たり入ったりしています。」
Taka「カナダのDavid Keanも知ってるんだよね。」
花本さん「すごいなあ、今度遊びに行こうかな。」
友人「Markusは、すごく誠実で正しい仕事をするエンジニアなんですよ。 シャイなところもあったり。」
Taka「花本さんのMellotronの背中に○○アイスクリームって、書いてありましたね。」
花本さん「あっ、ばれちゃった? あれは、めいとうアイスクリーム。 まあ、若気の至りですね。」
Taka「名糖だったんですか〜! いやー、何て書いてあったのかずーっと気になってました。」
(カワカタさん情報によると、津田さんのコメントで「名糖」では無く「名答」だとの事です。)

 ・・・なんて話をしていたら、既に辺りは真っ暗。 ということで、花本さんにお礼を言って、夢見心地のまま帰路についた私でした。 嗚呼、こんな事ってあるんだな...感激。

(画像左/新●月コンサート「遠き星より」告知チラシ)
(画像中/かまぼこ板の表札みたいになった、花本さんのサイン) 拡大写真は
こちらをクリック。
(画像右/Mellotron M400Sの鍵盤右側パネルを外したところ。)

2006年5月2日
Rick WakemanのMellotron
 YESのRick Wakemanは、1970年代当時6台ものMellotronを購入したそうですが、それと同時に愛憎の末、1978年にMellotronを焼却したと言う逸話も残っています。 しかしすべてのMellotronが燃やされた訳では無く、幸いにも歴史を刻んだMellotron M400Sが現存し、英国Streetly Electronicsから販売される事になりました。 ライヴアルバム「yessongs」に付属するカラーブックレットや、同じく「Yessongs」のビデオ等で見る事のできる、長い脚を付けた2台のMellotronのうちの1台がこれです。 その後、Rickの手によって黒く塗り替えられた事が、当時のツアーフォトで確認出来ます。 現在はStreetly Electronicsのレストアを済ませた状態になっています。 今回、御好意で、当サイトへ貴重な写真を御提供いただきました。(拡大写真は
こちらをクリック) 匡体を延長したのは、もちろん立奏を楽にするためですが、下からテープラックが顔を覗かせているのがハンドメイドを思わせて御愛嬌です。 Rickからの証明書付きで8000ポンド。 YESファン、Rickファン、そしてMellotronファンのみなさんいかがですか? お問い合わせはStreetly Electronicsまでどうぞ。 以下、Martin Smithさんの紹介文です。

We have one of Rick Wakeman's M400s available. It was used during the mid 70's when Yes were at their biggest. The M400 has specially extended legs to make it taller and easier to play as Rick always stood up. There is an original invoice with the M400 from Rick's company. The price is GBP8000.

(画像左/Streetly Electronicsより販売される、貴重なMellotron M400S)
(画像左から2枚目/脚を延長した独特のスタイルのMellotron)
(画像右から2枚目/M400を2台連結した改造「Double-Tron」がRickの左後方、長い脚の黒いM400は、Rick右後方に配置されています。)
(画像右/Rhodesを上に載せた黒いM400を発見! 1975年のジャパンツアーパンフレットより。)

写真提供 Streetly Erectronics社 Martin Smith氏

2004年2月1日
Mellotron M400D
 Rick Wakeman「The Six Wives of Henry VIII」のジャケット内側に、白いMellotronを指して「Mellotron 400-D」と注釈があります。 また、それを参考にしたと思われる古い文献が多く存在し、その様な機種が存在するかのようですが、実際はどうなのでしょうか?

 シリアルナンバー「#100」から始まる「Mellotron M400S」の内、極初期のモデルはそれ以前のモデル「Mellotron MODEL300」の部品の一部を受け継ぎました。 金属製の赤いシリアルプレート、真鍮製のキャプスタン、CMC-4モーターコントロールカードを備えているのが「Mellotron M400C」と呼ばれています。 それ以降のモデルが全て「Mellotron M400D」と称するかはわかりませんが、レコードジャケットや文献に見られる「M400D」と言う記述は少なくとも、初期型の「M400C」を指してはいないと思われます。 「M400D」は、一般的によく見かける銀色のシリアルステッカーであり、キャプスタンはステンレス製、そして悪名高いCMC-10モーターコントロールカードを備えています。 200番台のシリアルナンバーを持つM400は、既に「M400D」へ仕様変更されていますので、「M400C」は、約100台程度しか存在しない貴重なモデルとなります。 「C」「D」の表記は楽器本体には無く、生産工場のロット管理記号だったと推測されますので、「C」タイプも「D」タイプも一般的には「Mellotron M400S」呼んでかまわないのでしょう。 ちなみに当時のStreetly Electronicsの生産力は日産1.5台だったそうです。

(画像中/左の緑の基盤がCMC-10、そしてステンレスキャプスタン)
(画像右/ステッカータイプのシリアルプレート)

2003年10月6日
MellotronのSound FX
 様々な音楽を聴いていると、「これはMellotronの音だ!」「いや、これはストリングスアンサンブルかも知れない」と、Mellotron使用の有無が気になります。 そのうち、「これはMellotronストリングスじゃなくて、Mellotronブラスの音だな」と、音源の種類が気になります。 さらに、「これはM400Sじゃなくて、MARK IIの音だ」「まてよ、これはMellotronではなく、ORCHESTRONかな?」と、機種が気になります。 果ては、「Mellotronには、リズムトラックもあるらしいな」「あの汽笛の音はMellotronで出している」「自動車の発進音は、もしかしたらMellotron?」なんて事になり、Mellotron病の進行は末期的症状を迎えます。 「そりゃ、あんた考え過ぎだ!」とお叱りを受けるかも知れませんが・・・。

 1965年に発表された効果音専用モデル「Mellotron FX Console」は、ベースとなるMARK II同様、3/8インチ6ステーション3トラックテープに、70の鍵盤を備えています。 最大6×3×70=1260種もの音源を備える事が可能です。 鍵盤はただのスイッチと化し、音程は再現出来ませんが、当時としては画期的な「道具」であったことは間違いないでしょう。 以下に、FX Console1台分の標準的なテープセットの内訳をアルファベット順に記してみます。 (カッコ)内の注釈は、管理人が付け加えたものですので、間違いがあるかもしれません。

AIRCRAFT COMET IV(航空機コメットIV)
AIRCRAFT TIGER MOTH(航空機タイガーモス)
AIRCRAFT VARIOUS(様々な航空機)
AIRCRAFT VISCOUNT(航空機ヴィスカウント)
AIRFIELD(飛行場)
AIR RAID(空襲)
ANGRY,EXCITED,CROWDS(怒り、興奮、群集)
ANIMALS(動物)
APPLAUSE & CHAT(賞賛とおしゃべり、ざわめき)
ATOMOSPHER LONDON(ロンドンの雰囲気)
BABY(赤ちゃん)
BARGE,ETC(はしけ、遊覧船、他)
BATTLE(戦闘)
BELLS(鐘)
BELLS[MISCELLANEAOUS](様々な鐘)
BELLS & HOOTERS(鐘とサイレン、ヤジ)
BETTING SHOP(賭博場、馬券売り場)
BIRDS(鳥)
BOATS(船)
BOXING(ボクシング)
CAR RACING LE MANS(ル・マン自動車レース)
CHASERS,BANGS,STONES(猟師、銃声、石)
CHATTER(ぺちゃくちゃ、しゃべり声)
CHILDREN & BABIES(子供達と赤ちゃん)
CHIME BUZZER(チャイム、ブザー、警告音)
CHURCH BELLS(教会の鐘)
CHOPPING WOOD,ETC(伐採、倒木、他)
CLOCKS(時計)
COMICAL FEET(コミカルな足音)
CRASHES & BANGS(追跡、発砲、爆発)
CRICKET(クリケット)
CROWDS(雑踏)
CUCKOO CLOCKS(ハト時計)
CUP & DRAWER(カップ、水汲み?)
DIESEL[INTERIOR](ディーゼル車室内音)
DIESEL TRAIN(ディーゼル列車)
DIVING SWIMMING SEA(ダイビング、水泳、海)
DOCKS(波止場)
DOOR CREAK(ドアのきしみ)
DOORS(ドア)
ELECTRIC TRAIN(電車)
ELECTRONICS(電子音)
FIGHT(ケンカ、戦闘)
FIRE(火災)
FIREWORKS(花火)
FOOTBALL(サッカー)
FOOTSTEPS(足音)
FOOTSTEPS PAVEMENT(歩道の足音)
FOOTSTEPS VARIOUS(様々な足音)
FOREIGN CROWDS(外国の雑踏)
FROGS & TOADS(カエル)
GRASS CHASES,ETC(ガラス)
GLASS & EXPLOSION(ガラスの破壊)
GOON COMIC NOISES(おかしな効果音)
GUNFIRE WAR(射撃、発砲、戦争)
GUNS(銃器)
HELICOPTER(ヘリコプター)
HELICOPTER[SYCAMORE](ヘリコプター)
HOOTERS(ヤジ)
HORNS(警笛)
HORSES(馬)
HORSES & CARTS(馬、馬車)
HOUSEHOLD(家事)
HOVERCRAFT(ホバークラフト)
ICE & GREYHOUND(氷、グレイハウンド?)
INDUSTRIAL(産業、工場)
INDUSTRIAL EFFECTS(産業、工場)
INSECTS(昆虫)
LAND ROVER(自動車ランドローバー)
LARGE JET(大型ジェット機)
LAUGHTER & APPLAUSE(笑いと賞賛、拍手)
LAUGHTER & APPLAUSE[AMERICAN](アメリカ的、笑いと賞賛)
LAUGHTER & APPLAUSE[ENGLISH](イギリス的、笑いと賞賛)
LAUNCH(発射、進水式)
LIFTS(打ち上げ)
LORRY(貨車、トロッコ)
MARCHING(行進)
METAL CRASHES(金属破壊)
MISC(様々)
MISCELLANEOUS(様々)
MOTOR VEHICLES[EXTERIOR](乗り物車外)
MOTOR VEHICLES[INTERIOR](乗り物室内)
MUSICAL EFFECTS(音楽的効果)
PRISON(刑務所)
QUIET ATOMOSPHERE(静寂)
RADIOPHONICS(ラジオ、無線)
RAIN(雨)
ROWING(手漕ぎボート)
SAIL SHIP(帆船)
SALOON CAR(高級セダン)
SEA(海)
SHIPS(船舶)
SHIPS SIRENS(汽笛)
SMALL CROWDS(雑踏)
SMALL ENGINE PISTON(小型エンジン)
SMALL JET(小型ジェット機)
SPORTS CAR(スポーツカー)
SPLASHES(しぶき)
STEAM TRAIN(汽車)
SUBURBAN ELECTRIC(郊外電車)
SHORTS & CRASHES(スポーツ、衝突)
SWORDS(刀剣)
TELEPHONES(電話)
TENNIS(テニス)
THUNDER(雷)
TOILET(化粧室)
TRACTOR(トラクター)
TRAINS STEAM[EXTERIOR](汽車車外)
T.T. RACING(マン島オートバイレース)
TURBO PROP(ターボプロップ航空機)
UNDER GROUND(地下鉄)
VARIOUS SPORTS(さまざまなスポーツ)
WATER(水)
WATER SPLASHES SWIMMING(水、しぶき、水泳)
WIND(風)
2 STROKE VESPA(2サイクルエンジン、ベスパスクーター)
4 ENGINE PISTON(4気筒エンジン)
4 STROKE MOTORCYCLE(4サイクルエンジンオートバイ)

 もちろん、これが効果音テープのすべてではありませんし、1タイトルが1鍵盤分だけの音源では無く、様々なバリエーションの音源が準備されています。 音源のレコーディングには、ミュージシャンだけでなく、マジシャン等も参加していたというのは、これらの効果音を録音する為だったかもしれません。 1967年には、英国BBC放送が3台のFX Consoleを購入したのは有名ですし、1970年には、M400Sをベースとした「Mellotron 400FX Console」も発表され、通常のM400Sユーザーもこれらの音源を使用するチャンスが増えました。 Rick Wakemanのレコードジャケットには、「Mellotron400-D Sound Effects」との記述があり、M400SとMARK Vを使用したTANGERINE DREAMは、1975年に「教会の鐘」「鳥」「水」「雷」「工場」「拍手」等、様々な音が収録されたテープを特注しています。 そのテープは隣り合う鍵盤に同じ音が収録されているものもある事から、Mellotron演奏の時間的制約を回避する目的があったと考えられます。 つまり、「稼動する工場の騒音」「鳴り止まない拍手」など、複数の鍵盤を組み合わせて、延々と音を再生し、表現する事が出来たのです。 もちろんレコーディング時のテープエフェクトでもそれらは可能ですが、彼らを含む多くのアーティストが、様々な楽曲で、Mellotronの効果音テープを使用した事は、想像に難くありません。 「もしかして、あの曲で聴こえるドアの音や足音、鳥のさえずりや水の流れる音はMellotron?」と気になることは、実はそれほど重病では無いかもしれません。

写真提供 Ryo Sekine氏

2003年10月4日
あなたの選ぶベストメロトロンソング
 5月7日から、6月6日までちょうど1ヶ月間、「あなたの選ぶベストメロトロンソング」と題して、みなさんに投票していただきました。 候補曲が40曲までの投票でしたので、「あれが入ってない!」「あっちの方が良かったか?」と不完全燃焼だったかと思います。 中にはMellotronの使用が怪しい投票もあったりと御愛嬌です。
複数の投票ができる気楽な企画でしたので、厳密な結果を求めるものではありませんでしたが、それなりに楽しめたのではないでしょうか? 次回は「あなたの選ぶベストメロトロンプレイヤー」投票をやってみようかと思っています。 投票していただいたみなさん、御協力ありがとうございました!

 あなたの選ぶベストメロトロンソング 2003/5/7(水)〜2003/06/07(土)総投票数:127票

1位  ポセイドンのめざめ/KING CRIMSON(13票)
2位  クリムゾンキングの宮殿/KING CRIMSON(10票)
3位  エピタフ/KINGCRIMSON(8票)
3位  ストロベリー・フィールズ・フォーエバー/THE BEATLES(8票)
5位  レインソング/LED ZEPPELIN(7票)
6位  オー・キャロライン/MATCHING MOLE(6票)
6位  スターレス/KING CRIMSON(6票)
6位  ツァラトゥストラ組曲/MUSEO ROSENBACH(6票)
9位  August Carol/KESTREL (5票)
9位  WATCHER OF THE SKIES/GENESIS (5票)
11位 Four Moments/SEBASTIAN HARDIE(3票)
11位 Opera Prima/Rustichelli&Bordini(3票)
11位 SAD RAIN/ANEKDOTEN(3票)
11位 The Fountain Of Salmacis/GENESIS(3票)
11位 The Prisoner(Eight By Ten)/SPRING(3票)
16位 Grave New World/STRAWBS(2票)
16位 Mellotronmania/Calliope(2票)
16位 Prolog/Anglagard(2票)
16位 Seven Stones/GENESIS(2票)
16位 TOGETHER / THREE MAN ARMY(2票)
16位 サテンの夜/THE MOODY BLUES(2票)
16位 シーズ・ア・レインボウ/THE ROLLING STONES(2票)
16位 シベリアン・カートゥル/YES(2票)
16位 スペース・オディティ/DAVID BOWIE(2票)
16位 セイラ−ズテ−ル(船乗りの話)/KINGCRIMSON (2票)
16位 鬼/新月(2票)
16位 空と雲/四人囃子(2票)
16位 翼のある友/GREENSLADE(2票)
29位 Catherine Howard/Rick Wakeman(1票)
29位 Changes/BLACK SABBATH(1票)
29位 Get it on/T Rex(1票)
29位 Hirosima/WISHFUL THINKING(1票)
29位 Long Time/ANGEL(1票)
29位 NEVER LET GO/CAMEL(1票)
29位 New Day/LOVE AFFAIR (1票)
29位 SUPERNOVA/GRACIOUS (1票)
29位 To Take Him Away/SANDROSE(1票)
29位 Woodsmen/ATLANTIS PHILHARMONIC(1票)
29位 放浪者/KINGCRIMSON(1票)
29位 予言/美狂乱(1票)

2003年6月7日
私がTVで見たMellotron
 いつもメールで興味深い話題を提供してくださる、カワカタさんの「私がTVで見たMellotron」シリーズですが、掲示板へ掲載してそのまま流れてしまうにはもったいない内容ですので、こちらに抜粋してまとめさせていただくことにしました。 当時を知る方は懐かしく、初めて知る方には新鮮なお話ではないでしょうか。 左の素敵なイラストもカワカタさんの作品です。

 「元クレ−ジー・キャッツの谷啓さんが自分のバンド、スーパーマーケットでテレビに出た時、年代はもう多分77〜79頃(曖昧でスイマセン)そのバンドのKEY奏者が背面に黒に白抜きのMELLOTRONと大きく描かれた400Sを弾いていました。 TAKAさんのサイトを見たら解ったのですが、そのロゴは、75年のものでした。 谷啓さんのバンドの音は、自身のトロンボ−ン他数名のブラス・セクションと亀渕ユカがボーカルのファンキーな演奏で1曲だけでした。 しかし、メロトロンの音は、どこに鳴っていたのか全然解らなかったにもかかわらず、私はその白い箱を昼の番組で偶然見ただけでうれしかったのでした。 それから3〜4年前、多分、日テレの芸能人のお宅訪問の番組で谷啓さんの自宅のスタジオを兼ねたリビングにドラムス、トロンボ−ン、その他の楽器に混ざってピアノの横にMellotronがありました。 その時あのバンドで使ってた物じゃないかと思いました。 まだ、大切にされていたので私もうれしかったです。」

 「73〜75年頃TBS月〜金曜日の夕方5時からの番組ギンザNOWに出ていた、 ロ−ズマリ−と言うグラムっぽいバンドでハデなサングラスをかけたkeyboardがHAMMONDとともにMellotronを弾いてました。曲名は「あいつに気をつけろ!」で、このバンドは、トリオ・レコ−ドからアルバム、シングルを数枚リリースしていました。 メンバーはBASSが元グル−プサウンズのオックスの人で今はお笑い系になっているモト冬樹も東冬木の名前で、GUITAR.MELLOTRONとクレジットされていました。 もっともライブでは、ギターだけでしたけど、しかし、このギンザNOWと言う番組では、ゲストのバンドは週変わりで登場していたので、ロ−ズマリーの週は5日連続でMellotronが聞けてうれしかったのを憶えています。 ちなみに当時私は中学生でした。当時はまだヴィデオもまだ高嶺の花だったのでテレビを見た記憶でお話するしかないのですが、確か、Mellotronは128万円位でした。 私も銀座山野楽器でおそるおそる(高額な物の為)鍵盤を押してみましたが、電源は入っていませんでした。 しかし、そのキイタッチは、まるでテ−プレコ−ダーのスイッチのように重かったのを憶えています。」

 「ギンザNOW関係では、やはり、週変わりのゲストでハリマオと言うバンドもアルバムの中でMellotronを使っていましたが、TV出演時KeyboardはHAMMONDだけだったです。 このハリマオと言うバンドは、東芝EMIから、アルバムも出ていたんだけど、ツイン・ヴォーカルにドラムス、ギター、ベース、キーボードの6人編成で音はユーライア・ヒープ・タイプの派手なアクションのバンドでした。 中でもドラム・キットが当時では最新のアクリルのクリア−のキットでヴィジュアル的にも新鮮だったのですが、それを叩いてる人が確かアルバム・ライナ−かなんかの情報で精神病院を出たり入ったりしている人と聞いて、中学生だった私は楽器パ−トは違うけど、「日本にもついにシド・バレットみたいな人が現われたんだな〜」と思ったのを憶えています。 ちなみに、私はアナログ盤はかつては持っていたんですが、引っ越しをするたびに売ってしまいロ−ズ・マリ−やハリマオなど今は、手許に無いので記憶違いのネタも有るかも知れません。」

 「沢田研二が「追憶」と言う曲を歌っていた頃のTV出演の話で、ジュリ−のバックは例によって井上尭之バンドでした。 その「追憶」のレコ−ドの方には、オケの中に生のストリングスがバックに流れているんですが、その時のスタジオ・ライブでは、そのストリングスのパ−トを大野克夫がMellotron M400Sで再現していました!その白いMellotronの上にはARP 2600が乗っていて(右手側にセッティングされていた。)正面にはHAMMOND、左手側にはClavinet D-6が置いてあり全体で「コの字型セット」になっていました。 私の場合、この曲はレコ−ドもMellotronで弾いてると思って買ってから違ってがっかりしたのを憶えています。 ちなみに「追憶」を歌い終わるとジュリ−はひっこんでしまい、その後はもう1曲バンドだけでインストの曲、大野克夫作「OH!NO!」を演奏したのですが、そこの曲でClavinetやARP、HAMMONDを使っていました。 そこで私はあの「追憶」の為だけにMellotronは置いてあったんだ〜!と思いなんだかジ〜ンと感動しました。 だって高価なうえに扱いにくいのに間奏とかイントロとかだけの為にリスクを承知で移動させる事に、なんて贅沢なんだ!と思ったからでした。」

「私が思うに女性のキ−ボ−ドは多いのに、Mellotron奏者って意外に少ないですね。 ましてその映像ともなると、本当に数えるほどしか無いんじゃないですかね?アネクドテンもプログフェスの映像では見れなかったし、唯一アングラガルド位かと思ってたら、思い出しました!もう20年位前、テレビでDavid Bowieのスタジオ・ライブ「1980・フロア−・ショウ」を放送した時なんですけど、(この映像はブ−ト・ビデオででてます。)その放送では、なんと!前座がCARMENだったのです。 そこにセットしてあったのは、白い400Sとその上には、同じく白いARP Odyssey(初期)でした。 曲はなんだったか忘れてしまいましたが、Angela AlenがそのMellotronとシンセのみを弾いていました。 このL・A出身のバンドは兄のDavid Alen(GONGの人とは、同名異人)がヴォ−カルとスパニッシュギタ−なんですけど、そのギタ−のみの部分では、Angelaはフラメンコ・ダンスを踊っていて、そのフット・ステップ用に一段盛り上がった床には、バウンダリ−・マイクがしこんでありました。 そういえばアルバムのクレジットにもSYNTH・Mellotronの他にDANCEってありましたっけ。 しかしBowieの前座がなぜCARMENなのかと思うけど?たぶんプロデュ−サ−が同じTony Viscontiだったからじゃないですかね〜。」

情報とイラスト提供 カワカタ氏

2002年12月26日
21ST CENTURY SCHIZOID BAND
 2002年11月5日、6日、東京厚生年金会館にて、オリジナル・キングクリムゾンの再演と言える、21ST CENTURY SCHIZOID BANDのコンサートが行われました。 メンバーは誰だ?曲目は?なんて話題の中にMellotron使うのかなあ?という疑問が当然ありました。 1996年12月のSTEVE HACKETT&FRIENDSの来日コンサートで期せずしてIan McDonald演奏の「クリムゾンキングの宮殿」を聴いてしまったファンは、今回こそはもしかしたら!という希望を持った事だと思います。 私もその一人でしたし、英国Streetly ElectronoicsのMartin Smithさんが21ST CENTURY SCHIZOID BANDのカンタベリー公演へMellotron MARK IIを持って行くとMellotronメーリングリストで明かしていただけに、期待は高まるばかりでした。 そんな中水面下ではIanにMellotronを弾かせるべく、MARK IIを所有されている元VOWWOW、CASINO DRIVEの厚見玲衣さんと、前述のMartin Smithさんが動いていたのでした。 当サイトの掲示板を御覧になっている方やEURO-ROCK PRESS Vol.15を読まれた方は既に御存じかと思いますが、KINGCRIMSONの歴史、Mellotronの歴史としてきちんと残すべきエピソードと思い、こちらに厚見さんの書き込みを再掲しておきます。 厚見さんは後日この書き込みを悲愴感を強調しすぎて硬い文章になってしまい、今思うとお恥ずかしい限りと笑っておられましたが、その時のムードを重視するためそのまま転載させていただきます。

 Tokyo Mellotron Studio掲示板 2002年11月3日 "悲しいお知らせ"

「Taka@管理人サマ 及び 全国のTron ファンの皆様方へ

 突然どうも、初めまして、管理人サマから「日本のメロトロン・キング」等という身分不相応な評価を受け、大変恐縮している厚見玲衣と申します。 さて、 21st C.S.Bの東京公演もあと数日となり、期待と興奮で夜も眠られない方々も多いと思いますが、ここで悲しいお知らせがあります。 管理人サマに言われるまでもなく、Ian McDonaldがGiles兄弟と共に「宮殿」や「エピタフ」を演奏するこの歴史的な公演の為に、私自身所有するMK-II、又万が一のトラブルの用の黒のNova、白の400を出来る限りパーフェクトな状態で Ianに弾いて貰うよう準備してきました。 しかしながら、最終的な彼の答えは NOでした。 英国でのLive においても、Streetly Electronics のMartin Smith 、John Bradleyの二人が、絶対に本物のTronを弾くべきだと Ianを説得したにもかかわらず拒否していた事を知っていたので不安だったのですが、今回、日本の全てのCrimson、IanMcDonald ファンは、あなたがMellotronを演奏するのを切望していると伝え、かなり説得工作をしましたが、やはり結果は残念なものになってしまいました。 本人が弾きたくないというのなら、致し方ありません。 その理由なのですが、彼自身MK-IIを弾かなくなってから30年以上経っており、かなりナーヴァスになっていて、より信頼度の高いキーボードを使いたいとのことです。 以前インタヴューした時も、MK-IIの信頼性の低さについては、ツアーで3台持っていってもその内1台がようやく動くかなという状態だった言っていましたし、彼にとってMellotronという楽器は、 Nightmare 以外の何物でもなかったのでしょう。 確かに、MK-IIはあくまで家庭用として作られ、400のようなポータビリティー性もなく、400よりはるかに複雑な構造で、それ故非常にデリケートな楽器ですが、今回は東京公演2日のみですし、バックアップに400を2台用意しておけば多分大丈夫だと確信していたのですが・・・・・・・・。 と言うわけで、Tronによる宮殿サウンドを期待している方々が東京厚生年金会館に行き、Tronが置いていないと気付いた時のショックを少しでも和らげる為にと思い、お知らせしました。 暗い話題になりましたが、60年代後半、全ての文化の中心であった英国で誕生した、オリジネーターでさえトラウマにさせてしまうくらいWeirdで、この世でもっともPsychedelicな愛すべき鍵盤楽器、Mellotronをこれからも語っていこうではありませんか!」

(画像右/1969年7月5日ハイドパークBrian Jones追悼コンサートでのIanとWEMスプリングリバーブを上に載せたMellotron MARK II)

情報提供 厚見玲衣氏(ex.VOWWOW、CASINO DRIVE)

2002年12月18日
Mellotron M400Sについての考察 [2]
 コントロールパネルにいくつかのバリエーションがある400系ですが、下記(考察[1])にまとめた物の他にもまだあるようなので追補します。 画像はいわゆるブラックパネルの「Mellotron 400SM」ですが、下記のものと違い、パネルに「Mellotron 400SM」と大きくロゴが入っています。 スイッチノブが専用のものですので、おそらく「Sound Sales社」販売分の最終型かと思われます。 ちなみに、GENESISのTony Banksが1978年頃使用していた400は、ブラックパネルの銀ノブモデル、「Sound Sales社」販売の初期モデルのようです。

2002年7月10日
Mellotronエンスージャスト
 掲示板をご覧頂いている方には非常に気になる存在、イタリア在住のRyo Sekine氏から、貴重極まりない画像を大量にご提供頂いております。 順次整理して
「PHOTO&MOVIE」でご紹介させていただきます。 ここで紹介する画像は氏のMellotronのメンテナンスに訪れたStreetly Electronics社のMartin Smithさん、John BradleyさんとRyo Sekine氏御本人、コレクションルーム!の様子です。 所有モデルは、MARKII 2台、FX CONSOLE 2台、M300 2台、M400 5台、NOVATRON M400 3台、MELLOTRON 400FX 1台、NOVATRON MARKV 1台、4TRACK 1台、MELLOTRON MARKVI 1台、BIROTRON 1台、更に入手予定のモデルがあるそうです。 今後の更新を是非楽しみにしていてください!

写真提供 Ryo Sekine氏

2002年1月18日
ピンチローラー、プレッシャーパッドの調整
 先日、Mellotronメーリングリストから「大半のMellotronユーザーは、ピンチローラーとプレッシャーパッドの調整ねじをきつくしめ過ぎてているのではないか?」と言う、投稿がありました。 これには私も同感で、私のMellotronが長年その様な状態だったからです。 古いテープを使用しているMellotronは発音が小さくかすれ気味になりますので、プレッシャーパッドの調整ねじをきつくしめる傾向にあります。 その上テープ動作を安定させようとしてピンチローラー調整ねじをしめ込むことになります。 そうすると一応発音は安定するのですが、薄っぺらいテープにとっては過酷な状況になり、鍵盤タッチも非常に重くなります。 テープの痛みもそうですがどちらかというと、気になっていたのは鍵盤タッチの重さでした。 もう1台のMellotronは小指でも軽く鍵盤を押下出来るのに、問題のMellotronは指圧でもするかのごとく重く、気合を入れないと演奏できないくらいでした。 2台の鍵盤を見比べて違うところは、調整ねじのしめ具合なのです。 今までも、サービスマニュアルやメンテナンスビデオの通りにやってきたつもりだったのですが、どこか違うところがあるのだろうと思い、再調整をはじめました。

 ここからは
MOVEMENTを併せてご覧いただくとわかりやすいかと思います。

 鍵盤上、奥側がピンチローラー調整ねじ、手前側がプレッシャーパッド調整ねじです。 はじめにMellotronの電源を切った状態で双方のねじをすべてゆるめます。 電源を入れて鍵盤を押下しますが、この状態ではテープがピンチローラーによってキャプスタンへ押さえられないので、テープが全く動きません。 フロントカバーを外し、テープ動作を確認しながらピンチローラー調整ねじをしめ込んで行きます。 テープがよろよろスリップしながらでもどうにか上がっていく(動作する)状態までねじをしめてから、更に2回転ねじをしめます。 以前私は、テープが安定して動作するまでしめて、更に2回転しめていましたがこれは間違いでした。 そして、プレッシャーパッド調整ねじを音が安定して出るまで締め込み、更に1回転しめ込んで正規のセッティングです。 状況に応じて、前後1回転程度の調整は必要かと思います。 肝心なのは、出来るだけねじのしめ込みはゆるい方がテープ保護にも鍵盤タッチにも良いという事です。 これで驚くほど鍵盤タッチが軽くなりました(嬉)

 参考に「CMC社」(当時の日本輸入代理店)発行「Mellotron400解説書」から抜粋します。 読みにくい直訳文ですが記述通りに転載します(笑)

 3)圧力パッド(当あて)調整
圧力パッド調整は装置の前部に最も近いキーのトップから突出ている4BAねじを廻わすことによつて達せられます−下文ではパット調整ねじと称されています。パッドがテープを再生ヘッドと接触するようにちつとも押さないと仮定します。パッド調整ねじの右回りの動きは、パッドがキー圧力下に下方に動くようになりましょう。そして正確な調整でテープが演奏するようになります。パッド調整ねじは音が拾度聞かれる迄静かに右廻りに廻されなければなりません−この点でもう一回の完全回転が与えられねばなりません。

 4)ピンチ・ローラー調整
この調整は、キーのうしろに最も近い第二の4BAねじに依って遂げられます。ピンチ・ローラの正確な調整は仕切(スタール)を超えて完全に二回転することであります。このセッティングを遂行するには、ピンチ・ローラ調整ねじをその先端がテープが遅れてそして運行が拾度止まるようになる迄左回りに廻わします。この点でねじは右回りに二回全回転廻されねばなりません。これが正確な調整であります。

2001年12月21日
音源テープについての考察 [2]
 昨今、歌謡曲にも多く採用されているMellotron音源ですが、そのMellotronを解説、紹介する文献に多く見られるのが「音は約8秒しか持続しない」と言う意見です。 使用される音源は「Flute」「3Violins」という、いわゆるフルートとストリングスが定番ですので、サンプリングしてループさせてもそれほど元ネタからかけ離れる音になるものでもありません。 しかし、Mellotronの音源にはピアノ、ギターやパーカッション等の減衰音を持つ楽器の音源も多数あるのです。 それらを再生するには、当然のようにアタック音から再生しなければそれが何の楽器音か認識する事さえ難しいと思います。 まして、アナログテープを再生するという構造を持った楽器ならば、安易にテープをループさせる事はしないはずです。 Mellotronはあらゆる音源を演奏可能にするため、当然のようにリターンスプリングを装備した、有限なテープを採用したのです。 演奏時間が有限なのは決してネガティブな要素ではない事を明言しておきます。 以下「Dallas Music Industries社」発行「MELLOTRON 400 OWNER'S MANUAL」の序文を私がいいかげんに訳したものを載せておきます。

 はじめに

 磁気テープを応用した楽器について

 今まで、電子オルガンへ磁気テープに録音した音源を供給すると言う原理は、数々試みられてきました。 通常、さまざまなタイプのエンドレス・ループ式の物で、それらは、徐々に成功へと向かっていきました。 しかし、どんなにエンドレス・テープを回し続けても、どんなに可能性に満ちた音源テープを開発しようとも、それには重大な欠点があるのです。

 磁気テープ音源の魅力的な特徴の一つは、ミュージシャンが楽器を演奏したその音色が、電気的に合成された同じような音色よりも非常に優れていると言う事です。 どんな楽器の音色を認識するにも「調子」や「音程」だけでなく、音の出だし、つまり「アタック音」で認識される事は言うまでもありません。 エンドレス・ループ式と言えば、どこから音源を再生するかなど関係無く、鍵盤を離す瞬間まで音の出だしの特徴など全く無益なものなのです。 したがって、この方式は「ピアノ」や「ギター」の音を再現する事が出来ないのです。

 先述の通り、ある決まった始点から音源テープが再生される必要がある事を認識しなければなりません。 つまり、鍵盤を離すとテープが素早く始点へ戻るという事です。
「Mellotron」はその要求に答えるべく設計されているのです。

2001年12月19日
音源テープについての考察 [1]
 Mellotronの代表機種、M400S、MARK IIが使用している音源テープは、3/8インチ幅と言う特殊サイズです。 なぜ一般的なオープンリールデッキで使用される1/4インチ幅のテープを採用しなかったのか考えてみると、いわゆる最近のサンプルプレイバック・キーボード(シンセサイザー)がメーカー独自のフォーマット(メモリーカード、増設ボード)による音源供給で成立すると言う手法と同じ事を考えていたのだと思われます。 テーププレイバックキーボードと言う最新鋭の技術を他と違うフォーマットの音源供給をする事によって、利益を独占して上げる事が目的ではなかったのではないでしょうか。 一応、M400Sには1/4インチの変換キットもオプション設定で存在しましたが、自ら録音して音源を準備する人は希だったと思います。

2001年11月1日
リターンスプリングの代替え品
 リターンスプリングが伸びるとテープの戻りが悪くなり、演奏に差し支えが出ます。 そんな時の応急処置として画像左のようにスプリングの個定位置をずらす方法があります。 こうすれば、スプリングのテンションも上がり一時はしのぐ事が出来ますが、隣のスプリングと絡まったり、テープラックの交換時に引っかかったりして困ります。 余分を切ればそれも解消しますが、強度や耐久性が心配です。 新品のスプリングをMellotron Archivesから取り寄せて交換するのがベストですが、面倒な方は代替え品を見つけてはいかがでしょうか。 私が探してきたのは、画像右の物です。 DIYショップで1本270円、人形吊 線径0.3 外径5 長さ150と言う物です。 正規の物よりだいぶ径が細いのですが、スプリングのテンションが近いのと全長がうまく収まるので動作は良好です。 スプリング自体の品質も良く、長持ちしそうな感じです。

(画像左/応急処置を施したリターンスプリング)
(画像右/私が使用している代替え品)

2001年10月30日
Mellotronの塗り替え
 現存するMellotronも30年近くの歳月を経て、外観の痛みも進んでいると思われます。 私はオリジナル派だと言う人は、そのまま現状を維持する事に努力を払っていただいて、やっぱりきれいな方がいいと言う方は塗り替えをしてみてはどうでしょうか。 画像のMellotron M400S #614(785/967)が我が家へ来た時は、無残にもシルバーに刷毛で!塗られており、良く言えば「Spacy」悪く言えば「粗大ゴミ」状態でした。 これにはオリジナル派の私も絶句するしかなく、塗り替えを決意。 DIYショップで缶スプレーを6本とペーパーとマスキングテープを買い込んでいざスタート。 スプレーはラッカー系つや消しの物をお勧めします。 なぜ、つや消しかと言うとMellotronの筐体はベニヤのような安い合板で構成されており、面の平滑性がありません。ですからむやみに光らせると面の悪さが見えすぎて逆に汚くなります。 つや消しといっても、塗装面がカサカサしないように、スプレーをケチらず塗って、しっとりとしたつや消しで上品に仕上げましょう。 当て木をそえた240番くらいのペーパーで面を軽く荒らして、キズをウッドパテで修復し、マスキングを始めます。 内部の機械部分まで外せれば良いのですが、部屋の中!で行うには大変なので念入りにマスキングをします。 仕上がりはマスキングが勝負といっても過言では無いので、スイッチ回り、脚、機械部に絶対塗料がかからないように入念に行いましょう。 1面、スプレー1本ぐらいしっかり塗って乾燥後、組み上げれば完成です。驚くほどきれいになります。 詳細は
「PHOTO&MOVIE」Mellotron M400S #614(785/967)をご覧ください

2001年10月30日
Mellotron M400Sについての考察 [1]
 最もポピュラーなMellotron M400Sですが、いろいろと調べていくと、パネルデザインの違いや名称の違いがある事に気がつきました。 販売経路の違いによってそれらが変わっているのではないかという前提で、歴史を照らし合わせてまとめてみます。

 「Streetly Erectronics社」Mellotron M400S発表の1970年〜1976年の商標権売却まで使用されたスタンダードなアルミパネル。アルミ地に黒の印刷で「MELLOTRON LONDON-ENGLAND」と誇らしげ。

商品名「Mellotron M400S」
 EMI発注の黒パネル仕様は上記の反転(黒地に白抜き)で、ノブは専用デザイン。

商品名「Mellotron M400S EMI」
 1976年〜1980年(Mellotron USA/Bomer Fabricators社商標権取得まで)使用された「Dallas Music Industries社」販売の「DMI」ロゴステッカー付きアルミパネル。ロゴの背景は左半分星条旗、右半分ユニオンジャック。

商品名「Mellotron M400S」
 Bill Fransenの設立した「Sound Sales社」販売分1977年〜1980年(Mellotron USA/Bomer Fabricators社商標権取得まで)使用した黒パネル。アルミパネルの上全面にシールが貼られている。 基本的にシリアルナンバー#1000以降の後期モデルに多いと思わまれす。

商品名「Mellotron 400SM」
 更にその後期型はスイッチノブが専用デザインになっている。

商品名「Mellotron 400SM」
 商標権を失った「Streetly Erectronics社」が1977年〜1986年倒産まで止む無く使用した「NOVATRON」プレート。いつものアルミパネルの「MELLOTRON」ロゴを隠すかのように貼り付けられている。

商品名「NOVATRON 400」

 商品名の「M」は鍵盤群を示す「マニュアル」という意味と単純に「モデル」と言う意味がとれ、「S」は鍵盤群が一つである事を示す「シングル」を示すものと思われます。これは「M400S=モデル400シングル(鍵盤)」もしくは「M400S=マニュアル400シングル」と言う意味と「400SM=400シングルマニュアル(一段鍵盤)」と言う同じ商品に無理矢理差別化をはかろうとした結果ではないでしょうか。

 当然過渡期のどれでもないモデルも存在するのでしょうし、広告やカタログの名称もその時々によって違うので、研究の余地はまだありそうです。

2001年10月21日
Mellotron Tシャツ
 先日、某ロックバンドのコンサートへmoogのTシャツを着て出かけました。 会場のロビーへ入ったとたん、全く同じTシャツを着た女の子とはちあわせ、お互いにびっくり! MellotronのTシャツならそんなことはなかったか!

2001年10月12日
共同募金のMellotron奏者
 平成11年の「あかいはね共同募金」の広告です。 この笑顔の鍵盤奏者はなんと、Mellotron M400Sにそっくりな楽器を弾いているではありませんか! オルガンやピアノを描くなら絶対このカタチにはなりません! ベニヤ板チックな感じといい、側面のまっ平ら感といい、このシルエットはもう疑う余地はありません。 イラストレーターさんの隠れプログレに拍手。

資料提供 Brother of mine氏

2001年10月8日
2001年9月11日 HP開設にあたって
 まだまだいいかげんではありますが、HPを作ろうと本腰を入れはじめました。 当初、幅広い趣味のすべてを盛り込もうと思ってはじめてみたものの上手くまとまりそうにないので、本命「Mellotron」をテーマにはじめる事にしました。 写真は私のMellotron M400S/#714です。

 時を同じくして、米同時多発テロのニュースに心底驚かされました。 人を憎悪するエネルギーは想像もつかないほど巨大な姿に変貌するものだと、驚きました。 家族や友人だけでなく「第三者」に心開く勇気を持たなければならないと思います。 私の愛する楽器「Mellotron」は現実音を録音した磁気テープを再生するだけの、いわばテープデッキのような楽器です。 言い換えれば固有の音色を持たないので、楽器とは言わないのかもしれません。 しかしながら、そのローテクノロジーの機械から再生される音は現実音に独特の憂いを加えており、独自の世界を作り上げました。 私はその音色をこよなく愛しており、歴史に残る楽器であると思っています。 ギターもバイオリンもピアノもパーカッションも偏見無く楽器が好きな私でも、命が震えるほどの感動をもたらすのは「Mellotron」だけです。 人生の喜び、哀しみ、すべての感情をここまで表現しきる楽器を開発したエンジニア、ミュージシャンのエネルギーは尊敬に値します。 人間の醜い争いを乗り越える、手段の一つは音楽だと思います。 大好きな「Mellotron」にその一助になってもらえるよう、静かに「Tokyo Mellotron Studio」を始めたいと思います。

2001年9月11日
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