ARTIST INDEX

■ Q&A
■メロトロンの解説を前半に、Q&Aを後半に掲載しています。(随時更新中)

メロトロン(Mellotron)

 メロトロンは、あらかじめ録音された磁気テープを音源とする鍵盤楽器。 米国チェンバリン・インストゥルメント(Chamberlin Instrument)社の技術を元に、ブラッドレー(Bradley)三兄弟の経営する英国ストリートリーエレクトロニクス(Streetly Electronics)社が開発し、1963年に最初の製品メロトロン マークI(Mellotron MARK I)が発売された。

概要

 各鍵盤ごとにテープとテープを再生する機構が備えられており、鍵盤を押下することでそのテープが再生され出音する。 初代のメロトロンは、ホームパーティーや個人演奏を主目的とする家庭用楽器であり、音楽的素養の無いユーザーも意識して演奏の容易さを全面に出した販売促進が行われていた。 シンセサイザーが一般的でなく、しかもモノフォニックの時代に、完全ポリフォニックで様々な音源を再生出来るメロトロンは、オーケストラの代用になるばかりでなく、サイケデリックロックやプログレッシヴロックをはじめとする、新しい音楽表現の要求に応える事ができる数少ない楽器であった。 その可能性を脅威と捉えたイギリスのミュージシャンユニオンから、使用差し止めの要請が出るほどであったが、ビートルズ(THE BEATLES)やムーディーブルース(THE MOODY BLUES)、キングクリムゾン(KING CRIMSON)等の先鋭的なロックアーティストから徐々に受け入れられ、1970年代にはヒットチャートを賑わすポピュラーミュージックまで広く普及した。 メロトロン本体に録音機能は無い。

歴史

 チェンバリンの開発者ハリー・チェンバリン(Harry Chamberlin)は、自分のオルガン演奏を友人に聴かせる為、テープレコーダーに録音していた時、テープデッキそのものをオルガンの中に組み込めないだろうかと考えた。 そのアイデアが「テープを再生するオルガン」いわばサンプラーの概念の原型となった。 その後、ハリー・チェンバリンはテープ再生式のリズムマシンや鍵盤楽器の生産を開始する。 チェンバリン・インストゥルメント社のセールスマンとして働いていたビル・フランセン(Bill Fransen)は、ハリー・チェンバリンと共に楽器の改良と販路拡大のパートナーを求め渡英し、後にメロトロンを開発する事になるレスリー、ノーマン、フランクのブラッドレー(Leslie、Norman、Flank Bradley)三兄弟に出会う。 磁気ヘッドやアンプなどの電気機器の製造販売をしていたブラッドレー兄弟は、その特殊な楽器の可能性を予見し、チェンバリン モデル600ミュージックマスター(Chamberlin Model600 Musicmaster)を元にした試作楽器を完成させる。 そして1963年、メロトロンと命名された新型楽器を発表する。 これは、ビル・フランセンとブラッドレー兄弟の間だけで契約が交わされており、チェンバリン側は特許、知的所有権侵害でブラッドレー側を訴えるが、後に和解することになる。 ストリートリーエレクトロニクス社では、派生モデルを含め10機種以上のメロトロンを生産販売し一時代を築くも、デジタルシンセサイザーの台頭や音楽市場の変化に対応出来ず、1986年にストリートリーエレクトロニクス社が倒産し、メロトロンの生産は終了。 1999年に、版権を譲り受けた別会社メロトロンアーカイヴス(Mellotron Archives)社から、M400Sを改良したモデル、メロトロン マークVI(スウェーデン製)の生産販売が開始された。 2007年、ストリートリーエレクトロニクス社からも、新型M4000(英国製)の発売が開始された。

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主な機種

メロトロン マークII(Mellotron MARK II)
 初代メロトロン マークIは、発表後間もなく小改良が施され、マークIIと名称が変更された。 マークIが市場に出回った数は少なく、実質的な意味で初代メロトロンをこのマークIIを指して言う事が一般的である。 35鍵盤を左右に分割して並べ、合計70鍵盤を装備する1964年発表の主要モデル。 3/8インチ幅のテープには6ステーション3トラック、合計18トラック(音色)が装備される。 左35鍵盤には、ベースやドラムに加えて管弦楽器でアレンジされたリズム、フィルイントラック(ボサノバ、チャチャ、ディキシーランド等)を備え、右35鍵盤には、ストリングス、フルート、ブラス、ギターなどのリード楽器音を装備。 左右の鍵盤演奏を組み合わせることで、曲を成立させる。 当時のプロモーションフィルム、デモレコードで「2本指で演奏出来る」(左右で4本指)と謳われており、映像では指揮者エリック・ロビンソン(Eric Robinson)の案内で、マジシャンのデヴィッド・ニクソン(David Nixon)が親指と人さし指の2本で演奏する様子が映し出されている。

メロトロン M400S(Mellotron M400S)
 メロトロンの代名詞とも言える1970年発表の普及モデル。 マークIIの70鍵盤から片側半分の35鍵盤へ、音源もリード音源のみとし18トラックから3トラックへ、外部スピーカーを廃止するなど装備を簡略化し、小型軽量化を実現した。 音源テープを着脱可能なアルミフレームに収め、交換を容易にし、レコーディングやステージでの利便性を一気に高めた。 レッドツェッペリン(LED ZEPPELIN)やイエス(YES)、ロキシーミュージック(ROXY MUSIC)のステージで見られる白いメロトロンはこのモデル。 1973年から日本にも正規輸入され、数多くのレコーディングで使用された。

ノヴァトロン 400SM (Novatron 400SM)
 1977年、経営不振によりメロトロンの商標権がメロトロニクス社と共に、メロトロン販売会社ダラスミュージックインダストリー(Dallas Music Industries)へ売却された際、生産工場であるストリートリーエレクトロニクス社から直接販売される物にノヴァトロンという商品名が付けられた。 安定性を増したモーターコントロール回路を備えており、ネームプレート以外はメロトロン M400Sの後期型400SMと基本的に同じ楽器である。

メロトロン マークVI(Mellotron MkVI)
 メロトロンアーカイヴス社から、1999年に発売された新型現行モデル。 M400Sの基本構造を踏襲し同じモチーフの外観を持つ。 M400Sには無かった、ワンタッチでオクターブダウン出来るハーフスピードスイッチを装備。 枯渇していたメロトロン市場に満を持して投入され、ブラウンカラーの1号機はイギリスのロックバンド、オアシス(OASIS)のもとに納入された。

ストリートリー M4000(Streetly M4000)
 ストリートリーエレクトロニクス社から、2007年に発売された最新型メロトロン。 1968年発表のモデル300(Mellotron MODEL300)以来、約40年ぶりのステーション構造(サイクリング構造)を持つメロトロンとなった。 3/8インチ幅のテープには8ステーション3トラック、合計24トラック(音色)が装備される。 テープの再生ポイントを任意に調整出来るインチングモード(Inching Mode)や、ライヴステージのスモークやホコリが楽器内部に侵入するのを防ぐ内圧機能フィルトロン(FILTRON)など、従来のメロトロンには無かった新機能を備えている。

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名前の由来

 諸説あるが、MELOdyとelecTRONicsを組み合わせた造語と言うのが広く流布した説。 また、イギリスSound On Sound誌 2002年8月号のメロトロンに関する記事によると、ビル・フランセンがイギリスに渡ってブラッドレー兄弟とこの新型楽器を開発した時に、mellfluous(声、音楽などなめらかな、流暢な、甘美な)と、electronicsを組み合わせた造語でMellotronと名付けたとあり、現時点で最も信憑性の高い説と考えられる。 また、ランダムハウス英和辞典では mello(w)+(elec)tron(ic) と解説されている。

製造販売会社

 アルドリッジエレクトロニクス(Aldridge Electronics)社に続きブラッドマティック(Bradmatic Ltd)社から社名を変更したストリートリーエレクトロニクス社は、1963年から1986年までメロトロンの製造を行う。 また、メロトロニクス(Mellotronics)社は、当時勢いのあった独立系レコーディングスタジオであるI.B.C.(International Broadcasting Company)のオーナー、ジョージ・クルーストン(George Clouston)が開設したメロトロンの営業販売部門で、音源テープの開発や広報を受け持っていた。 当時I.B.C.とメロトロニクス社は同じビルにあり、初期のメロトロン音源はI.B.C.スタジオでレコーディングされている。 1986年のストリートリーエレクトロニクス社倒産後、1991年に米国人デヴィッド・キーン(David Kean)が、迷走するメロトロンの会社商標権等を買い取り、メロトロン・アーカイヴス社を設立し、1999年からメロトロン マークVIの製造販売開始。 2001年、メロトロン・アーカイヴス社の所有権がデヴィッド・キーンからスウェーデンのエンジニア マーカス・レッシュ(Markus Resch)へ完全移譲されメロトロン社(Mellotron, Inc.)に社名変更。 以後、アナログとデジタル両方の機器開発が進められる。 2007年、メロトロン開発者の子息らが運営するストリートリーエレクトロニクス社も、レストアメロトロンの販売と併せて、新型メロトロン M4000の発売を開始。

 これまでに英米でメロトロンに関わった企業名は以下の通り。 Aldridge Electronics、Bradmatic Ltd、Bradmatic Productions、Streetly Electronics、Eric Robinson Org、Mellotronics Ltd、Dallas Arbiter、Dallas Music Ind.Streetry Elec、Dallas Music Ltd.Plateau Elec、Sound Sales Inc./Bomar Fabricators Night Owlel、MELLOTRON USA、Mellotron Digital Corp、Mellotron Archives


音源テープ

 音階で録音されたフルート、バイオリン、ピアノ、ブラス、ギター、マンドリン等から、ドラムロール、シンバル等の打楽器、汽笛、エンジン音、拍手や歓声、動物の鳴き声、各種効果音まで、1000種以上の様々な音源が準備される。 音源は、オーケストラ指揮者エリック・ロビンソン、ビートルズのレコーディングに参加した経験を持つチェロ奏者のレジナルド・キルビー(Reginald Kilby)や、後の名エンジニアであるグリン・ジョンズ(Glyn Johns)、マジシャンのデヴィッド・ニクソンらが起用され、I.B.C.スタジオでレコーディングされた。(クワイアとパイプオルガンの音源については、聖ジョンズウッド教会(St.John's Wood Church)でレコーディング) また、ビートルズ「The Continuing Story Of Bangalow Bill」の有名なスパニッシュギターフレーズは、エリック・クック(Eric Cook)によって演奏された。 タンジェリンドリーム(TANGERINE DREAM)や、ポール・マッカートニー(Paul McCatrney)らが使用した、特注テープのレコーディングもI.B.C.スタジオで行われていた。

 メロトロンのバイオリン音源は、チェンバリンと共有されたと言われている。 メロトロン マークIに装備されていなかったバイオリン音源をマークIIに設定する際、ビル・フランセンがチェンバリンから譲り受けたマスターテープはコピーされた物だった為、そのジェネレーションの違いがマークII独特のストリングスサウンドを生んだと言われている。 また、M400Sで設定された3バイオリンズ音源もEQ加工されており、同じはずであるチェンバリンのテープとは印象が違う。

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 M400Sには1/4インチテープへの変換キットが準備されており、オープンリールデッキを用いて独自の録音テープを製作する事も可能だった。 それらはチック・コリア(Chick Corea)やヒカシュー(HIKASHU)の作品で確認出来る。


カタログ・広告

 Streetly Electronics、Mellotronics、Dallas Arbiter、株式会社CMC、SOUND SALES、MELLOTRON USA、Mellotron Archives、他各社のカタログ及び広告を掲載。

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プロモーションフィルム

 1965年に制作された映像が、YouTubeをはじめとするインターネット上で閲覧できる。 これは指揮者エリック・ロビンソンの案内で、マジシャンのデヴィッド・ニクソンが「Bye Bye Blues」(バイバイブルース)「Sous Le Ciel De Paris」(パリの空の下)を、メロトロンデモンストレーターのジェフ・アンウィン(Geoff Unwin)が「El Cumbanchero」(エル・クンバンチェロ)をメロトロン マークIIで演奏するもの。 メロトロンには音楽的素養の無い人にも鍵盤演奏の機会を与えるという側面もあった為、デヴィッド・ニクソンはいかに簡単に演奏出来るかをアピールしたのに対し、ジェフ・アンウィンは超絶テクニックでメロトロンの可能性を最大限に表現して見せた。 また2007年にリリースされたムーディーブルースのDVD「Classic Artists THE MOODY BLUES」には、1964年にMellotron開発者のレスリー・ブラッドレー自らがテレビ局の放送用に16ミリフィルムで撮影した、メロトロン マークII(or I)の貴重なモノクロ映像が収録されている。

日本語マニュアル(準備中)

 1973年からメロトロン M400Sの正規輸入販売をした、株式会社CMCによる日本語マニュアル「メロトロン 400 説明書」を掲載。 英文マニュアルを直訳した内容は、誤記、誤字が多く、解読するにはメロトロンについての一定の知識を要します。(誤字については、可能な限り訂正しました。) また、手元にあるコピーが18ページからなるもので、これで全てかどうかは不明です。 このCMCの説明書に関して、御存じの方がいらっしゃいましたら是非ご教授ください。

日本語マニュアルはこちら。(準備中)


使用例

 主にロック、ポップスの楽曲にオーケストラサウンドを取り入れる際に使用される他、様々な効果音のテープを活用してテレビ番組の効果音も作られた。 初めてレコーディングにメロトロンを使用したのは、グラハム・ボンド・オーガニゼーション(THE GRAHAM BOND ORGANISATION )の「Lease On Love」(1965年 Mellotron MARK II)と言われている。 当時の広告には「グラハム・ボンドの新曲に耳を澄ますと、ブラスやストリングスの音に気付くでしょう。 あなたが知る事が出来ないのは、これらはメロトロンという革命的なオルガンによってグラハムが演奏している事なのです。」と紹介されている。

 ビートルズ「ストローベリー・フィールズ・フォーエバー」(1967年 Mellotron MARK II)、エルトン・ジョン(Elton John)「ダニエル」(1973年 Mellotron M400S)のフルート音源や、ローリング・ストーンズ(THE ROLLING STONES)「2000光年のかなたに」(1967年 Mellotron MARK II)、ムーディー・ブルース「サテンの夜」(1967年 Mellotron MARK II)、キングクリムゾン「クリムゾンキングの宮殿」(1969年 Mellotron MARK II)、レッドツェッペリン「レインソング」(1973年 Mellotron M400S)のストリングス音源など、多くの使用例が挙げられる。

 マークIIのテープには、リズムやイントロ、エンディングのフィルまで備えられており、ビートルズ「The Continuing Story Of Bangalow Bill」ではスパニッシュギター、キンクス(THE KINKS)「Phenomenal Cat」ではスウィンギングフルートが演奏されている。 キングクリムゾンは1969年のライヴインプロヴィゼイションで、ビートルズと同様にスパニッシュギターのフレーズを使用したり、1995年の「VROOOM」でボサノヴァのフレーズを使用し話題となった。

 現在は、ポール・ウェラー(Paul Wellar)、オアシス、レニー・クラヴィッツ(Lenny Kravitz)、レディオヘッド(RADIOHEAD)らの使用が有名。

 日本においても、1973年後半からメロトロン M400Sの正規輸入がはじまり、1974年前後のフォーク、ロック、ニューミュージック、映画やアニメの劇伴、果ては演歌にいたるまで、驚くほど多くのメロトロン音源を確認することが出来る。 1970年代では、深町純、瀬尾一三、石川鷹彦、ミッキー吉野らの膨大なセッションワークや、冨田勲諸作品のメロトロンコーラス、サディスティック・ミカ・バンド(SADISTIC MIKA BAND)、チューリップ(TULIP)、オフコース(OFF COURSE)、バズ(BUZZ)などのニューミュージック勢の使用例が挙げられる。 1980年代では、ヒカシューの井上誠、ヴァウワウ(VOWWOW)の厚見玲衣、ピンク(PINK)のホッピー神山、岡野ハジメらの使用例が目立っている。 2000年には、再結成したTM NETWORKの小室哲哉が、スタジオアルバムとそのコンサートツアーでメロトロンを使用し話題となった。 デジタルサンプラーが台頭する近年でも、厚見玲衣、高野勲、島田昌典らがプロデュース、サポート作品へ積極的にメロトロンを使用している。 またレッド・ツェッペリンの完全コピーバンドシナモン(CINNAMON)が、コンスタントにメロトロンをステージで使用している。

 日本に正規輸入されたメロトロンはM400S(含むノヴァトロン)のみである為、上記のレコーディングでは海外レコーディングで使用されたマークIIの例外を除き、ほぼすべてM400Sが使用された。
メロトロン演奏の動画はこちら、使用アーティストはこちら、楽曲使用例はこちら


購入方法

個人輸入
 イギリスのストリートリーエレクトロニクス社では、新型メロトロン M4000が4500ポンド(フライトケース375ポンド)、2列70鍵盤のM5000が8000ポンドで発売された。 またアップグレードパーツによる完全レストア品(新品テープ、12ヶ月保証付き)のメロトロン M400S、ノヴァトロンが3000ポンド、同じくメロトロンマークIIが12000ポンド(現在在庫なし)で販売されている。

 スウェーデンから出荷されるメロトロン社では、メロトロン マークVIが6800ドル〜、2列70鍵盤のマークVIIが14500ドル(共にフライトケース込み)で、販売されている。

国内販売
 福産起業(Five G)、アーバンミュージックでは、メロトロン マークVI、及び中古のM400Sを購入する事ができる。


Q&A

■音が8秒で止まるのはなぜ?
「ピアノやパーカッション等の減衰音も再生可能にするため、常に同じ位置から音源テープを再生させる必要がありました。 そのため音源テープはループ状になっておらず再生時間は約8秒と有限になっています。 鍵盤を離すとテープはリターンスプリングで元の位置へ強制的に戻されます。 チェンバリン初期のテープ再生式リズムマシンが、ループテープを備えていた事を考えると、上記の理由から敢えてこの方式を選んだものと思われます。」

■再生時間を過ぎて鍵盤を押し続けるとどうなるの?
「音源テープが回転するキャプスタンとピンチローラーに挟まれている上に、スプリングで引っぱられている為、負荷がかかり最終的にはテープが切れる恐れがあります。」

■音源テープは交換できるの?
「カートリッジ式のテープ構造を持つ400系は用途に応じて簡単に交換できます。 ただし音源の選択肢が多いステーション構造を持つマークII、モデル300は交換式では無い構造ですので大変時間がかかります。」

■バイロトロン(Birotron)って何?
「エンドレスの8トラックカセットテープを音源とし、メロトロンの再生時間の短さを改善するべくデヴィッド・バイロ(David Biro)とイエスのキーボードプレイヤー、リック・ウェイクマン(Rick Wakeman)が設立したバイロトロニクス社(Birotronics)で共同開発した鍵盤楽器です。 生産台数が極めて少なく一般にはほとんど流通していません。」

■オーケストロン(Orchestron)って何?
「米国のおもちゃメーカー、マテル(Mattel)社が販売していた光学ディスク再生式オルガン、オプティガン(Optigan)のプロユースモデルです。 ヴァコ(Vako)社によって製造販売されており、機構的にも開発会社も全く別ですのでメロトロン後継機との指摘は的確では無いでしょう。」

■チェンバリンのテープはモーターで巻き取られるって聞いたけど、具体的にどうなってるの?(質問/yoshioさん)
「左側にフライホイールに繋がった再生用モーターと、右側にテープ巻取り専用のモーター計2基を備えています。鍵盤を押すと再生ヘッドがテープを再生用のモータのシャフト(キャプスタン)に押しつけられ巻き取られます。 この時、巻き取り用のシャフトは空回りをしており、鍵盤を離すとこれが固定され、巻き取られるといった具合です。」(解答/イワノフさん)

■8Voice Choirの男声女声のオクターブユニゾンについて。 雑誌には最高オクターブで男声だけ一番下のG音と同じ高さからの繰り返しになるとありました。 Mellotron Archivesの解説では下から2番目のオクターブからの繰り返しと説明があり、そのサウンドサンプルでは最高オクターブのE音で男女同じ高さの声で歌われています。実際はどうなんでしょう?(質問/MJさん)
「様々なサイトのサウンドサンプルを照合した結果、男声は2オクターブ目からの繰り返しのようです。」(調査/MJさん)

■ムーディー・ブルースのマイク・ピンダー(Mike Pinder)が、メロトロンの生産工場で働いていたって本当?
「本当です。 2005年のインタビューでも、マイク本人が以下のように語っています。 工場の全部門で働いていたので、メロトロンの開発や構造について熟知していたよ。 私がしていた仕事は、テープをテストし時間を計る事だ。 完成品が私のところへ送られてきて、テープを調整し動作を確認して、承認のスタンプを押すんだ。」

■ピンダートロン(Pindertron)って何?
「ムーディー・ブルースのキーボーディスト、マイク・ピンダーが使用したメロトロン マークII、または演奏するメロトロンサウンドそのものを指す俗称で、古い文献にはピンダトロン(ピンダーと伸ばさない)の表記も見られました。 マイク・ピンダーが自ら開発した特殊な楽器であるかのような説は間違いですが、メロトロンの生産工場ストリートリーエレクトロニクス社で、出荷前検査を行っていた経験のあるマイク・ピンダーは、その知識を生かし楽器内部に様々なモディファイを加えていたのは事実です。 しかし、外観までその変更が及ぶ事は無く、見た目は通常のメロトロン マークIIと同じです。」

主要な変更点は以下の通り。

1)左鍵盤のリズム&フィル音源を右鍵盤と同じリード楽器音源に交換。
2)標準の真空管プリアンプから、マイク・ピンダーが設計したと言われるソリッドステイトのプリアンプに交換。
3)電源ユニットをメロトロン モデル300の物に交換。
4)アンプと左右の内蔵スピーカーを軽量化の為撤去。
5)左右の鍵盤に対応した2つのXLRアウトプットジャックを装備。

■ビートルズの「ザ・ロング・アンド・ワインディングロード」はメロトロンを使っているの?
「生のコーラスです。」

■10ccの「アイム・ノット・イン・ラヴ」のコーラスはメロトロン?(質問/夏服さん)
「コーラスの多重録音をミキシングで操作しているようです。」(解答/Feliceさん)

■ジェネシスの「ウォッチャー・オブ・ザ・スカイズ」は何の音源を使用しているの?
「ストリングスとブラスをミックスして使用しています。 この曲をレコーディングしたマークIIは各トラックの中間をワンタッチで選択出来る、ミックスボタンを装備しています。」

■70年代、ムーディーブルースのマイク・ピンダーが開発していたと言うカセットテープ式のメロトロンとはどんな物?
「その事実は無いので、バイロトロンの誤報かもしれません。」(調査/Taka)

■レッドツェッペリン「天国への階段」のイントロはメロトロンを使ってる?
「メロトロンではなく、リコーダーの多重録音です。
ちなみに「レインソング」「カシミール」のストリングスは、メロトロンマークIIでレコーディングされています。 また、キーボードのジョン・ポール・ジョーンズは1972年の再来日公演から「天国への階段」のリコーダーをライヴで再現するべく、メロトロンM400Sを導入しており、「サンキュー」の導入部に「さくらさくら」のメロトロンソロを披露していたようです。」(調査/カワカタさん)

「ジョン・ポール・ジョーンズの研究サイトによると「レインソング」はマークII使用と書いてありますが、彼がスタジオでマークII使用した写真やインタビューは見た事が無い様に思います。 いずれにせよ「カシミール」は、マイナーのサビのみM400Sで後のリフは本物のバイオリン、チェロです。 ライヴではヤマハGX-1導入前に、M400Sやジミー・ペイジの所有するマークVプロトタイプだけで演奏する時期もありました。」(調査/キーボーディスト厚見玲衣さん)

■フレンチプログレバンド、アンジュの使う「アンジュオルガン」ってメロトロンの事ではないの?
「オルガンとは別に、メロトロンは白いM400Sを使用しているので、どうやら違うようです。 独特のオルガンサウンドは、ファルフィッサコンボオルガンに深いリバーブやモジュレーションをかけたような音で、ハモンドオルガンでは無いようです。 つまり、アンジュオルガンはメロトロンでは無く、深いエフェクトをかけたオルガンという事だと思います。 アンジュはアルバム2枚目〜7枚目までメロトロンを使用しているにもかかわらず、詳細な楽器クレジットは7枚目「Guet Apens(邦題:異次元の罠)」しかされていません。」(調査/カワカタさん)

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